実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『女醫の記録』(清水宏)[C1941-21]

たちばなに寄ってかりんとうを買い、BLESS COFFEEで昼ごはんを食べてからフィルムセンターへ。はじめてタダのコインロッカーを利用した。便利だが、開場するまでは使用できないのがガンである。

フィルムセンターでは、一ヵ月ほど前から「生誕百年 映画女優 田中絹代(1)」(公式)が開催されているが、ほとんど終わるころになってはじめて行く。清水宏監督のレアもの、『女醫の記録』が上映されるとあれば、行かないわけにはいかない。しかし、もう3回めだからかもしれないが、こんなに空いていていいのか?

東京女子医専の女医(よくわからないが、研究室か付属病院にいるのだろうか)である田中絹代は、無医村の巡回診療でイヤイヤながら山の中の部落へやってきたところ、村の分教場の先生は佐分利信だった。「わあ、イイ男」とうれしくなって診療に精を出し、迷信に惑わされる、偏見に満ちた頑固な村人たちを根気強く説得し、あげくの果てに滞在期間が終わっても佐分利信といっしょに村に残る、というお話(多少の脚色あり)。無料の治療費や女医さんたちの給料をだれか(国?)が出しているはずなので、当人の一存で残れるわけがないとか、つっこみどころはたくさんあるが、清水映画だからそんなことを気にしてはいけない。

『女醫の記録』というカタいタイトルとは裏腹に、清水印満載の牧歌的な映画。美しい山村の風景に、元気な子供たち。爆弾小僧(横山準)もちゃんと出ている。女医さんたちは、分教場での診察のあと、病人のいる家に治療をしに行くのだが、その目的は実は治療ではない。女医さん+医学生の群れが村の中をぐんぐん縦移動する。そのシーンを撮ることが真の目的なのだ。肺炎になりかけた赤ちゃんを助けたり、肺病の娘を勇気づけたりする感動的なシーンは、移動シーンのすばらしさの影にうまい具合に隠れてくれている。ロングショットが多いためか、クサいシーンもあまり気にならない。

田中絹代はしゃべりかたが理屈っぽいので、意外にインテリ役が似合う。しかし、ヒロインらしくもう少しかわいらしくてもいいし、佐分利信とももう少し絡んでほしかった。佐分利信の存在感がちょっとうすい。