バンガロールに来ちゃったの

サイトやFlickrの更新情報、映画や本の感想(ネタばれあり)、日記(Twitter/Instagramまとめ)などを書いています。

『月の桂 - 株式会社増田紱兵衞商店』(宮腰太郎)[B1227]

『月の桂 - 株式会社増田紱兵衞商店』読了。

月の桂を作っている造り酒屋、増田紱兵衞商店(公式)について紹介した本。小津安二郎の『小早川家の秋[C1961-04](asin:B0000ZP474)の舞台は伏見の造り酒屋で、中村雁治郎が主人公の小早川万兵衛を演じている。この小早川万兵衛のモデルが増田紱兵衞商店の十二代目・増田紱兵衞(信一)であり、そのあたりのことが書かれているというので購入した。

この本に書かれている『小早川家の秋』に関する情報をまとめると次のとおり。

  • 小早川家の秋』の脚本執筆は、主人公の性格をつかみあぐねて難航していたが、知人の十二代目・増田紱兵衞をモデルにすることを思いついて一気に書き上げられた。
  • 撮影では、小道具一切を増田家からセットに持ち込んだ。

正直言って、この程度の情報ならわざわざこの本を買うまでもなかったような気もする。しかしモデルとなった酒屋についてある程度は情報が得られたので、一応よしとしよう。

しかしながらこの本、本としてはかなりひどい。異様に素人くさく、増田紱兵衞商店や月の桂に関する情報が、きちんと順序だてて述べられてはいない。そのため、増田紱兵衞商店についても月の桂についても、基本的な情報が十分得られたとは言いがたく、また内容が少ないわりに読みにくい。表には著者は書かれておらず、奥付にひそかに書かれているだけだが、それにもかかわらず著者個人のことがいろいろ書いてあって、「あんたのことは別にいいから」と何度も言いそうになった。

間違いも散見されるが、一番ひどいのは小津安二郎のプロフィール。

小津安二郎監督・プロフィール
明治三十六年東京生まれ。大正十二年松竹蒲田に入社。『懺悔の刀』を皮切りに、『晩秋』『東京物語』『小早川家の秋』などの傑作を次々と生み出し、日本を代表する名映画監督。海外での評価も高い。(p. 64)

ブログを見ていると、時々「小津安二郎監督の『晩秋』を観た」という人がいる。そのたびに、「私は現存する小津のフィルムはすべて観ていますが、『晩秋』は未見です。ぜひ観てみたいです。」とコメントしたい衝動に駆られる。しかし、性格悪いと思われそうなのと(実際悪いけれど)、時間の無駄なのでコメントしたことはない。うっかりミスと言われればそれまでかもしれないが、やはり許しがたい。『懺悔の刀』にもびっくり。