実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『バール、コーヒー、イタリア人 - グローバル化もなんのその』(島村菜津)[B1218]

『バール、コーヒー、イタリア人 - グローバル化もなんのその』読了。

バール、コーヒー、イタリア人―グローバル化もなんのその (光文社新書)

バール、コーヒー、イタリア人―グローバル化もなんのその (光文社新書)

これもイタリア行きに備えたお勉強の一環。イタリアのバールについてそれほど知識がなかったので、それなりにおもしろく読んだ。しかし、内容が多岐にわたっており、いくぶん散漫な印象を受ける。新書だからやむを得ないかもしれないが、広く浅くよりも、もっとイタリアの話に絞って狭く深く書いてほしかった。たとえば、スターバックスと個人経営のバールが比較されているのだが、それならセガフレード・ザネッティのようなイタリアのチェーン店と個人経営のバールを比較するとどうなのか。イタリア国内での地域差だとか、バールとカフェの棲み分けだとか、それぞれ多少はふれられているものの、もっと深く追求してほしいテーマがいろいろあってちょっと残念である。

ひとつ興味深かったのは、コーヒーに催淫効果があるかどうかについて、かなり昔から議論があったということ。どちらかといえば、不能になるという意見が主流のようだが、催淫効果があるという見解もあるようだ。これで思い出すのは、小津安二郎の『淑女は何を忘れたか』[C1937-04](asin:B00009XLL9)のラストシーン。

「ね……珈琲でも入れましょうか……」
「うむ……でも今から飲んで寝られるかな」
「寝られるわよ」

このような台詞を入れた小津は、「催淫効果がある」派だったのだろうか。

ところでこの本、タイトルはいいのに、変なサブタイトルがついていて台無しだ。私もたまにつけるけれど、サブタイトルはタイトルを台無しにする方向に働くことが多いように思う。説明的なタイトルはつけたくないけれど、時流に乗ったわかりやすい言葉を入れたいという出版社側の意向はよくわかるのだけれど。