実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『セーラー服と機関銃』(相米慎二)[C1981-27]

東劇で、相米慎二監督の『セーラー服と機関銃』(東京フィルメックス)を観る。第12回東京フィルメックスの特集上映「相米慎二のすべて -1980-2001全作品上映-」の一本。いちばん有名な相米作品だけど、公開当時は相米なんて知らなかったし、テレビやビデオも含めてまったくの初見。原作も未読。

さりげなくではなく、「ヘンなことやってます」という感じにヘンなことをやっている映画。そこは悪くない。やはり長回しが目立つが、終盤の、前に人形がいる食堂がある通りの長回しで、人形の動作がひたすら繰り返されるところや、俯瞰の超ロングショットで撮られている、薬師丸ひろ子渡瀬恒彦が屋上で弔いをするシーンがよかった。

女子高生がヤクザの組長になるというストーリー自体はおもしろいと思うし、10代の女の子が活躍する映画は基本的に大好きなのだが、この映画の薬師丸ひろ子は苦手だ。もともと彼女には優等生的なイメージがあるが、この映画はそのイメージを最大限生かしたような役柄である。まず第一に、真面目なよい子で説教キャラである点が駄目。説教キャラ自体が苦手なうえに、これまた苦手な、若い女の子特有の、おねえさんぶったりおかあさんぶったりする感じが重なって受け入れがたい。第二に、風祭ゆきとの会話などで、これも若い女の子特有の潔癖さが感じられるが、現在ならもちろんのこと、当時の時代背景的にみても潔癖すぎてカマトトっぽい。そんな真面目な女の子が機関銃をぶっ放して喜ぶというギャップが見どころなのかもしれないが、そこに至るまでにもう拒否するほうに気持ちがかたまってしまっていて、どうにも動かしようがない。

このような受け入れがたさをさらに決定的にするのが、オタクっぽい言葉づかいである。同級生の男の子たちに向かって言う「おたくたち」「youたち」という言葉が、それを発する薬師丸ひろ子独特の声や言い回しと相俟って、最悪に気持ち悪い。当時そんな言葉づかいが流行っていたとも思われないが、あれは原作にあるのだろうか。それから、女子高生のヒロインとしてはスカート丈が少しばかり長すぎる。もう少し短くないとかわいくない。

このあとの相米作品と同様、登場人物が歌う歌が効果的に使われていて、薬師丸ひろ子と風祭ゆきが歌う『カスバの女』がよかった。俳優では、柄本明がすごく若くて、一瞬息子かと思った。藤原釜足に気づかなかったのが不覚だった。

上映後、黒沢清監督と榎戸耕史監督のトークショーがあった。たまに映画祭などで見かけて、批評家かなにかだと思っていた人が、実は榎戸監督だったことがわかった。