TOHOシネマズシャンテで、ヌルマン・ハキム監督の『カリファーの決断』(東京国際映画祭)を観る。第24回東京国際映画祭のアジアの風部門アジア中東パノラマの一本。
父親や夫に従順だったムスリム女性が、自分の判断で生き方を決めるようになるまでを描いたもの。ヒロインのカリファー(マーシャ・ティモシー)は、家族の生活のため、進学も諦め、見合い結婚をするが、夫は敬虔なムスリムで、ヘジャブを着けろとかニカブを着けろとかうるさい。カリファーは言われるままにニカブを身に着けるが、あまり原理主義がのしてきていないインドネシアでは、ニカブを着けている女性は少ない。からかわれるだけでなく、テロリストまたはその家族とみなされ、嫌がらせを受けたりもする。「そんな短絡的な」とカリファーも観客も思うが、物語は意外な方向へと進む。カリファーは、自身がニカブを身に着けることでそのメリットもデメリットも知り、夫を失ったあとは、着けるも着けないも自分の判断で決めることにする。
途中、中東と行き来するセールスマンの夫が留守がちなカリファーの家の前に、独身のちょっといい男が越してくる。ここでメロドラマ的展開になるのを期待したが、彼はサウジアラビアへ出稼ぎに行ってしまう。しかし最後、サウジアラビアではみんなニカブを着ているといってニカブ用の黒い布を送ってくれる。ニカブに抵抗のなくなったカリファーは、きっとこの布でニカブを作ってサウジアラビアへ行くに違いない。
カリファーの働いている美容院の経営者はおそらく華人で、お店にある関帝の神棚みたいなの(正式には何て言うのだろう?)を拝んでいたが、敬虔なムスリムのために女性専用デーを設けたりもするところが興味深かった。