実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『MAD探偵 - 7人の容疑者(神探)』(杜琪峰、韋家輝)[C2007-54]

新宿K's cinemaで、杜琪峰(ジョニー・トー)、韋家輝(ワイ・カーファイ)監督の『MAD探偵 - 7人の容疑者』(公式)を観る。東京国際映画祭で上映されたときはチケットがとれなかったので、今回が初見。

人の内面が見える元刑事が劉青雲(ラウ・チンワン)、彼に失踪&強盗事件の捜査協力を依頼する刑事が安志傑(アンディ・オン)、その事件の犯人が林家棟(ラム・カートン)。劉青雲の元妻の幻が林熙蕾(ケリー・リン)。

内面が人の形で見える、というアイデアはユニークである。林家棟には7人の人格があって、7人並んでいたかと思えば、食べるときは林雪(ラム・シュー)ひとりになったりするのもおもしろい。しかしもう少し7人を描きわけて、それぞれの見せ場を作れないものかと思う。また、表には見せない人格だから当然かもしれないが、どうも内面の人物に魅力がなくてうんざりする。それに、幻想の妻がやたらガミガミ言うのが理解できない。幻想でも奥さんにガミガミ言われたいなんて、理解できない男ゴコロ。

安志傑の内面が気弱な少年だったので、いわゆる若者の成長物語なのかと思ったら、あっさり裏切られた。しかし、安志傑の劉青雲に対する気持ちが、信頼から懐疑へと変わっていくあたりが今ひとつすっきりしない。ラストシーンはなかなかクールだったけれど、その前に安志傑の内面がウザ過ぎたので、けっこう醒めて観てしまった。

杜琪峰と韋家輝のコンビといえば、思い出すのは『ターンレフト ターンライト』[C2003-21]。杜琪峰のはづかし映画のひとつ。そのような先入観をもって臨んだのが、今ひとつ乗れなかった理由かもしれない。

劉青雲はたぶん久しぶりだけど、暑苦しい顔のわりに嫌悪感を感じさせない、稀有な俳優だと思う。でも今回は、ときどき武田鉄矢に見えて困った。林家棟はなかなかよかった。林熙蕾はあいかわらずぜんぜん魅力がない。常にそうならいちいち言わないけれど、「『父子』[C2006-14]ではよかったのに」と毎回思ってしまう。