急いで六本木ヒルズに移動して、東京国際映画祭2本めは、コンペティション部門、ハミド・レザ・アリゴリアン監督の『フラミンゴ No.13』(TIFF紹介ページ)。
列車が到着して、降りた男が遠ざかっていくのが列車の窓に映っている。なかなか魅力的なオープニングに期待が高まる。イラン辺境の流刑地を舞台にした、二人の流刑者の男と、現地に住む若く美しい未亡人のお話。禁止されているフラミンゴ猟に取り憑かれた男ソレイマンと、彼と再婚する女タマイ、そして彼女を一方的に愛する男。いつ、どこともしれない寓話的なお話は、いまひとつわたしの好みに合わなかった。ソレイマンのルックスが生理的にかなり苦手だったのもマイナス要因。
最後の展開を自浄能力といってしまってはいけないのだろうが、すごく小さな、閉じた世界の心地よさと恐ろしさのようなものが胸に迫ってくる感じはあった。冒頭で、教授が「刑期が終わっても、きっと帰れない」と言っていたのが、最後まで観てわかる気がした。登場人物のほとんどがトルコ系だったり、流刑者の教授は政治犯ではないかと思わせるところがあったり、政治的な意図もあるように思われるが、ちょっとそこはわからなかった。
わたしがこの映画を観たのは、映画祭公式サイトに載っている写真のせいである。雪景色のなかに浮かび上がるジグザグ道がキアロスタミ映画を思わせて、これはもう観るしかないと思った。この場所は何度か出てきたけれど、最初は雪景色ではなく、ジグザグ道はあまりはっきりとは見えなかった。冬になってやっと、スチルと同じジグザグ道の風景を観ることができたけれど、そのころにはもう感動はなかった。
上映後、ハミド・レザ・アリゴリアン監督、プロデューサーのフーマン・アーマディ・トフィギ、脚本兼ソレイマン役のラスール・ユーナン、タマイ役のバラン・ザマニをゲストにQ&Aが行われた。公式サイトにこのQ&Aのレポートは見当たらないが、公式記者会見のレポートはこちら(LINK)。