実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『香港無印美食』

香港の茶餐廳についての本、『香港無印美食』ISBN:4048945475
茶餐廳がテーマという企画はすばらしいが、内容はちょっと物足りない。何が物足りないかというと、

  1. 写真が足りない。
  2. 固有名詞が足りない。
  3. 著者のこだわりが足りない。
全ページカラー写真可能な上質紙で作られていて、それなりに写真は入っているのだけれど、ぜんぜん足りない。説明にあわせて茶餐廳の内部の具体的な写真がほしいし、ひとつの料理に対して複数の(異なる店の)写真がほしい。そしてそれぞれに、どこにある何という店のものか書いてほしい。文中に書かれたエピソードも、「ある茶餐廳」ではなく、具体的な名前を書いてほしい。たとえそのお店を知らなくても、理解を深め、具体的なイメージをつかむためには固有名詞が重要である。
それに、こんな本を書くからには、もっと偏執狂的なこだわりを期待する。朝食セットのインスタント・ラーメン・スープが死ぬほど好きだとか(そりゃ、私だ)、このお店がとにかく好きだとか、この店のこの席がお気に入りだとか、常連のじいさんを毎日見に行くとか(これも私か)。茶餐廳が好きだというのは伝わるんだけれども、全体的にうすい印象が否めない(どうせ買うのは濃い人ですから…)。
また、香港における茶餐廳の位置づけという意味では、星馬のコーヒーショップとか、パリのカフェとかと比較してみるとおもしろいのではないかと思う。