ベンガルールに住むことが決まったときに調べてみて、Biffes/Bengaluru International Film Festival(当時はBangaloreだったかも)というのがあるのを知った。2012年末の家探しのベンガルール行きが、ちょうど第5回の開催期間と重なっていたが、公式サイトを見てもスケジュールも参加方法もわからず、英字紙には一行の記事も見つからなかった。あれから4年、徐々にネット情報も増え、新聞報道もされるようになり、いろいろと様子がわかってきたので、ついに今年、第9回の映画祭に参加してみた。その体験から、参加方法や当日の様子など、簡単に紹介してみたい。そんな情報に需要があるとも思えないけれど。
概要
- 会場はベンガルールとマイスール、期間は開会式を除いて7日間、上映される作品数は230。
- 上映ごとのチケットは発売されない。パスを買えば基本全部観られる(一般600ルピー)。
- [ラインナップ発表→スケジュール発表→チケット発売]という順序が常識だと思っているあなた、その常識は通用しない。ラインナップ情報がパラパラと出る→参加登録(パスの発売)開始→オンライン登録締切→全ラインナップが出る(数日前)→スケジュールが出る(開催直前)→参加登録締切→映画祭開始という感じ。ラインナップやスケジュールが出てから考えようと思ったら間に合わない。行けそうだと思ったらまずパスを買うこと。
- 観たい映画を観るには並ばなければならない。整理券の発行や座席指定は行われない。満席も多い混雑状況なので、かなりの体力勝負である。
- ゲスト(インド映画が中心)が来ても舞台挨拶のみで、上映後のQ&Aなどは行われない(別途ディスカッションや講演がいくつかある)。
映画祭情報
- 公式サイト:BIFFES Beta – BIFFES
- Facebook:https://www.facebook.com/BIFFESblr/
- Twitter:https://twitter.com/BIFFESBLR
開催前(上映作品の発表・紹介など)はFacebookが、期間中(当日のスケジュール変更など)はTwitterが主な情報発信源。フォロー必須。
会場
- PVR: Orion Mall(ベンガルール)とINOX: Mall of Mysore(マイスール)。
- PVRは11スクリーン、INOXは4スクリーン。ベンガルールだけで全作品を観ることができるが、マイスールでは上映されない部門がある。
- Orion Mallと同じ場所にシェラトンがあり、泊まって通うと便利だと思うが一泊2万円くらいなのでちょっと無理。また日本人が多く住むアパートもあり、ふだんは日本人多すぎて住みたくないけれど、映画祭期間だけはここに住む人が心底うらやましい(きっと誰ひとりその特権を行使していない)。「この期間は一時帰国してるから安く使わせてあげる」という奇特な人はいないだろうか…。
参加方法
- 事前に参加登録してパスを買うことにより、基本的にどの作品でも観ることができる。
- パスは一般600ルピー。もっと安いシニアや関係者用のパスもある。18歳未満は参加不可。600ルピーというのは、PVRクラスの劇場だと2〜5本分くらいの値段。
- 参加登録は、オンラインと指定会場での申し込みの二種類。ID(パスポート)のコピーと写真が必要。
- 参加登録は映画祭開始前に締め切られる(オンラインのほうが早い)が、いつが締切ということは事前に知らされない。開催期間中、日によって(平日のみ?)Daily Passが限定発売される(この情報はTwitterのみで流れ、詳細は不明)。
- 映画を観るためには、観たい作品の劇場に並ばなければならない。シニアは別の列で、優先的に入場できる。続けて鑑賞する場合、前の上映が終わった時点ですでに定員オーバーということがあり得る。8スクリーンが共有するロビーに、似たような時間に始まる映画の行列ができるため、目当ての行列の最後尾を探すのがまず一苦労(「こちらが最後尾です」のプラカードを持ったスタッフはいないが、混雑がひどいのでだんだんスタッフが配置されたり人数を数えたりするようになってきた)。列の後ろのほうではみなきちんと並んでいるが、前のほうには「何気なくそのへんにいて開場したら横入りする人」がそれなりにいる。また同行者に頼んでトイレなどに行った場合、その間に開場して満席になると入れてもらえない(わたしは一度これでもめて、結局強行突破して入ったが、同じような人が入り口につめかけていて、後ろからは押される、前には進めないという状況で死ぬかと思った)。同じ理由で、席を取ってから外に出るのもリスキーである。前の上映が遅れている場合も多く、開場時間の予測も難しい。かなり地獄なシステム。
- 窓口でパスを見せれば公式プログラムがもらえる。ただし、同内容のものは公式サイトから誰でもダウンロードできる。
上映作品
次のような部門があり、すべて英語字幕つき。ボリウッドやハリウッドのメジャー作品はない。
(1) Cinema of the World:93本
- オープニングは“La Vache(One Man and His Cow)”、クロージングは“Hjartasteinn(Heartstone)”。
- 日本映画:『永い言い訳』、『海よりもまだ深く』
- 日本で上映・公開予定の映画:『あなた自身とあなたのこと』(東京国際映画祭2016上映)、『The NET 網に囚われた男』(1/7公開)、『たかが世界の終わり』(2/11公開)、『哭声/コクソン』(3/11公開予定)、『未来よ こんにちは』(3/25公開予定)、『午後8時の訪問者』(4/8公開予定)、『セールスマン』(6月公開予定)、『密偵(原題)』(2017年公開予定)(もっとあると思うけれど、本数が多くてチェックしきれず)。
(2) Asian Cinema Competition:14本
- 日本で上映・公開予定の映画:『マンダレーへの道』(東京フィルメックス2016上映)、『プラハからの手紙』(アジアフォーカス・福岡国際映画祭2016上映)、『暗くなるまでには』(大阪アジアン映画祭2017上映予定)
(3) Chitra Bharathi Indian Cinema Competition:13本
- 日本で上映・公開予定の映画:『隠されていたこと』(大阪アジアン映画祭2017上映予定)
(4) Kannada Cinema Competition:12本
- 一般公開済のもの:“Godhi Banna Sadharna Mykattu”、“Kahi”、“Rama Rama Re...”、“Actor”
(5) Kannada Cinema of Popular Entertainment:5本(すべて一般公開済)
(6) Retrospectives
- Buddhadeb Dasgupta(ベンガル映画監督):5本
- Harini(カンナダ女優):3本
- ファーブリ・ゾルタン:5本
- ハスケル・ウェクスラー:7本
(7) Country Focis
- エジプト:3本
- ヴェトナム:8本
- ルクセンブルク:4本
(8) Homage
- アンジェイ・ワイダ:『残像』(6月公開予定)
- M. Balamuralikrishna
- アッバス・キアロスタミ:『クローズ・アップ』
- Paul Cox
- ジャヤラリター
- オーム・プリー
- Sanketh Kashi
- Srihari Khoday
- ジャック・リヴェット:『恋ごころ』
- ラウール・クタール:『Z』
- Dr. Ka Ashok Pai
(9) FIPRESCI(International Federation of Film Critics) Award Winners:6本
- 日本で上映・公開予定の映画:『サーミの血』(2017年公開予定)
(10) NETPAC(Network for Promotion of Asia Pacific Cinema) Award Winners:6本
(11) Bio-Pics:7本
- 日本で公開済の映画:『ヴァン・ゴッホ』
(12) Dr. B. R. Ambedkar 125th Birth Anniversary:1本
(13) Centenary Tribute:BS Ranga, GV Iyer, Kempraj Urs, ML Indira
(14) French Cult Comedies:5本
(15) Unsung Incredible India:7本
(16) Dr. Srinath 50 Years in Kannada Cinema:2本
(17) Additional Screening:9本
上映
今回観たもの
まとめ
★長所
- インドでは一般公開されることのないヨーロッパ映画やアジア映画、一般公開が危うい非商業的なインド映画が、よい映画館で安くしかも英語字幕つきで観られる。
- カンナダ映画については、未公開のものだけではなく、前年公開された良作や古い映画がいろいろ観られる。外から来る場合にはこのあたりが魅力だと思う。
- (ぜんぜんそこまで手が回らないのだけれども)オマージュ部門が充実していると思った。
★短所