実録 亞細亞とキネマと旅鴉

サイトやFlickrの更新情報、映画や本の感想(ネタばれあり)、日記(Twitter/Instagramまとめ)などを書いています。

“Ek Villain”(Mohit Suri)[C2014-45]

PVR: Koramangalaで、Mohit Suri(モーヒト・スーリー)監督の“Ek Villain”(facebook)を観る。ヒンディー語。Sidharth Malhotra(シッダールト・マルホートラ)、Shraddha Kapoor(シュラッダー・カプール)、Riteish Deshmukh(リテーシュ・デーシュムク)主演。

  • 『愛するがゆえに(Aashiqui 2)』が『スター誕生』のパクリだと言われている(わたしは『スター誕生』未見のため判断できず)Mohit Suri監督の新作。今回は金知雲(キム・ジウン)監督の『悪魔を見た』のパクリだと騒がれていて、監督本人も「インスパイアされた」とかは認めているらしい。
  • 大筋は『悪魔を見た』と同じで、李炳憲(イ・ビョンホン)の役をシッダールトくんが、崔岷植(チェ・ミンシク)の役をリテーシュが演じている。大筋は同じだけれど、『悪魔を見た』ではほとんど描かれなかったふたりのバックグラウンドが大幅に追加されている。そのため、ほぼ男ふたりのドラマだった『悪魔を見た』とは違い、シッダールトくんの奥さん役のシュラッダーが主演級になっているわけである。『悪魔を見た』よりちょっと尺が短いのに、ないシーンが大幅に追加されているのだから、男ふたりの対決場面は大幅に減少し、男ふたりの濃密なドラマという側面は薄まっている。
  • “Ek Villain”は、ふたりのバックグラウンドを導入することによって、物語をもっと納得できるものにしようとしたのではないかと思われる。その結果、『悪魔を見た』の理不尽さ、やり切れなさ、後味の悪さ、救いのなさはかなり薄まって、作品が描こうとしているものも『悪魔を見た』とは別物になり、ラストはほとんど反対になっているように思われる。
  • 『悪魔を見た』はけっこう好きなので、シッダールトくんでのリメイクは観てみたく、ちゃんと権利を取ってリメイクすればいいのにと思ったが、あれのリメイクならA認証は免れない。ティーンに人気の俳優を使って、ボリウッドのメジャーで作るのだから、A認証はあり得ないだろう。よりマイルドな再構成には、そのような背景もあるのではないかと思われる。
  • シュラッダーの異様に明るい役柄と、ボリウッド映画らしいゴージャスできれいな感じと、内容のマイルド化によって、映画から感じる雰囲気も大きく異なっている。
  • 『悪魔を見た』から取り去られたものは、実はわたしが『悪魔を見た』で気に入っていた部分である(『悪魔を見た』の感想→id:xiaogang:20110227#p2)。だから、比較すると「いいところをわざわざ作り変えた映画」ということになってしまう。最初から別物だと思って観ればこれはこれでいいとも思えるし、『悪魔を見た』の凄惨さや救いのなさがイヤだという人はこちらのほうがいいかもしれない。未見の人は事前に『悪魔を見た』を観ないほうがよいだろう。
  • 大筋は同じでもかなり作り変えていると思えば、それほど騒ぐこともない気もするのだけれど、気になるのは筋だけではなくてディテールなどがパクリっぽく、なんとなく安易な感じがつきまとう。ちなみに、「マイナーな韓国映画にどれだけ似てるか知らないが」みたいなことが書かれた批評があったけれど、インドではともかく、『悪魔を見た』は決してマイナーな韓国映画ではないと思う。
  • シッダールトくんはとにかくかっこいいし、なかなか好演していたし、似てはいないけれどイ・ビョンホンと雰囲気的に違和感がないためすんなりと観られる。一方のリテーシュは、チェ・ミンシクがやっていた役とはかなり異なる設定だと思うのだけれど、どうしても比べて観てしまった。『悪魔を見た』のあの役ももっとふつうっぽい人がやったほうがいいと思ったし、終わってみるとなかなかよかったのだけれど、実は顔が苦手です。
  • 『愛するがゆえに』は同じ台詞の繰り返しが印象的だったが、本作でもスマイリーフェイスを描くシーンなどが印象的に繰り返されている。
  • 舞台はゴアとムンバイ。『愛するがゆえに』も冒頭の舞台がゴアだったが、監督は何かゴアと関連があるのだろうか。それとも単に好みなのだろうか。
  • シッダールトくんもパーで走っていた。でも映画でおなじみの描写、女の子の乗った列車を追いかけてホームを走るというシーンでパーなのはどうなんだろう。必死で走っているという雰囲気は出ていたのだけれど。