シネマート六本木で、シャロン・ダヨック監督の『海の道』(東京国際映画祭)を観る。第24回東京国際映画祭のアジアの風部門フィリピン最前線〜シネマラヤの熱い風の一本。
フィリピンのミンダナオ島から、マレーシアのサバ州(ボルネオ島)へ密航しようとする人々を描いたもの。主な登場人物は、サバへ働きに行こうとしている兄と妹、叔父と姪と称しているが、実際は人身売買の仲買人と売られる娘、それに何度も往復し慣れた水商売か何かの女性(マリア・イザベル・ロペス)など。さらに、船が出る直前になってサバへ行くのを取りやめる、売られる予定だった娘たち(本人たちはたぶん単なる出稼ぎのつもり)。
背景的な説明は全くないのだが、自然な会話の中から、彼らがなぜ密航しようとするのかが、サバへ行けば仕事や豊かな生活があると思われていることと、ミンダナオでの生活が苦しく希望のないものであることの両面からうまく説明されている。しかし、マレーシアのボルネオ側へは行ったことがないが、サバにそんなに豊かな生活があるようには思われない。
船が出発してからは緊迫感のあるシーンが続くが、暗くてほとんど顔もわからないのがなかなかチャレンジング。