実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『博徒』(小沢茂弘)[C1964-40]

同じく新文芸坐の特集「最後のドン 追悼・岡田茂 東映黄金時代を作った男(チラシ)で、小沢茂弘監督の『博徒』を観る。

目当ては鶴田浩二主演のこちらだったが、先に『日本侠客伝』[C1964-07]を観てしまうと、マキノ雅弘と小沢茂弘の実力の違いをまざまざと見せつけられた感じ。はっきりいって、こちらの印象はほとんど残らなかった。

登場人物の関係がけっこう複雑なのに、それが効率よく説明できていない。そのため、なんだかグダグダな印象のままどんどん進んで、どうも盛り上がらない。やくざの世界をよりリアルに描くということで、賭場のシーンとか、襲名披露のシーンとか、儀式的なものを詳しく描いている。興味深くはあるけれど、それがおもしろいかというとそうでもなく、長くて退屈に感じたりもする。

キャストは、月形龍之介とか、松方弘樹とか、内田良平とか、天知茂とか、仁侠映画ではわりと珍しい人が出ていて、けっこう豪華なのだけれども、なんとももったいない感じ。

博徒』シリーズの第一作だが、そういうシリーズがあることは認識していなかった。ネットで調べても、どれが『博徒』シリーズの映画なのかよくわからない。この映画以降の、鶴田浩二主演でタイトルに「博徒」とつくもののほとんどがそうだとすれば、何作かは観ていることになる。チラシによれば『日本侠客伝』と二本柱にしようと企画されたものだということだが、『日本侠客伝』にははるかに及ばず、鶴田浩二はおもしろくなかったんじゃないかと想像する。