新宿K's cinemaの特集「それぞれのヌーヴェルヴァーグ」で、ジャン=リュック・ゴダール監督の『女と男のいる舗道』を観る。17年ぶり2回め。
- 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
- 発売日: 2006/05/26
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この映画の第一の魅力は、なんといっても主演のアンナ・カリーナである。まさしくアンナ・カリーナを見るためのアイドル映画。冒頭で魅力的な横顔と正面をアップで見せておいて、いざ物語が始まるとしばらくずっとうしろ姿ばかり、というじらしかたも憎い。アンナ・カリーナはどの映画でも魅力的だが、どれか選べと言われたらこれと『はなればなれに』[C1964-25]だと思う(と言っても観ていないのがたくさんあるのだが)。
この映画でのアンナ・カリーナで最も特徴的なのは、ショートボブのヘアスタイルである。これが実にキュート。真似したいが、たぶんもともとあるウェーブのために、特徴のわかりにくい、一歩間違うとおばさんくさくなりかねない、真似しづらいヘアスタイルとなっている。ファッションは、子持ちの役ということもあってかちょっとミセスっぽいけれど、手紙を書いているシーンの服がすごくかわいいし、カーディガンのさりげない着こなしなど真似したい。
映画のスタイルも斬新。12のタブローで構成されており、各タブローの最初にそのタブローの要約というかアウトラインのようなものが表示される。要約というより、もしそれがなければそこまでわからないようなことまで示されているので、それを最初に提示することで、続く映像の解釈を規定するものになっている。
このアウトラインは、3個程度の単語またはフレーズの並びで構成されている。わたしは以前、句表現要約という自動テキスト要約の研究をしていたので、それとちょっと似ているのがうれしい。ちなみにこの映画を初めて観たのはその研究を始める前だったが、その研究をしているあいだにこの映画のことは思い出さなかった。思い出していたらプレゼンで言及したのにと思うと、いまさらながら残念である。
映画中では、ヒロインの名前や設定がエミール・ゾラの『ナナ』からとられていたり、ポーの小説が朗読されたり、ナナが『裁かるゝジャンヌ』を観たり、ジャン・フェラの“Ma Môme”を聴いたり、哲学者が哲学を論じたりと、直接間接にいろいろなものが引用されている。いいかげん、『裁かるゝジャンヌ』を観たり、『ナナ』を読んだりもしなければ。モノクロの映像もかっこいいが、音楽もいい。同じ短い音楽が、いつも唐突に始まって唐突に終わる。この音楽はなんとミシェル・ルグランだった。