実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『ソウルのバングラデシュ人(반두비)』(申東一)[C2009-44]

新宿K's cinemaの「真!韓国映画祭2011」で、シン・ドンイル(申東一)監督の『ソウルのバングラデシュ人』を観る。

ソウルを舞台に、韓国人女子高生と出稼ぎバングラデシュ人労働者の交流を描いた映画。ヒロインの女子高生ミンソ(白珍熙/ペク・ジニ)は、顔はあまり好みではないが(だれかに似てると思うんだけれども思い出せず)、性格的には好みのタイプ。マイペースで友だちと群れず、気が強くて女の子女の子していない。『藍色夏恋[C2002-03]で桂綸鎂(グイ・ルンメイ)が演じた孟克柔(モン・クーロウ/モン・コーロウ**1 )タイプ。

いっぽう、バングラデシュ人のカリム(Mahbub Alam Pollob)は、悪くはないけれども、ちょっときれいにまとまりすぎている気がする。思うに彼は、外国人労働者の問題に関心をもつ、ヒューマニストっぽい知識人(監督もそのひとりだろう)が、こうあってほしいと思う外国人だと思う。韓国では単純労働に甘んじているが、知的でまじめないい人で、問題意識が高く、自分の置かれている状況や韓国社会を客観的に見る目をもっている。しかも韓国語が話せる。好感度は高いが、これという個性に欠けるように思われる。

けっこうひどい出会いをしたふたりが、次第に心を通わせていく物語はおもしろかったし、カリムが指摘する韓国社会の醜さは、ちょっと図式的だけどそのまま日本社会にも通じる。単なる心の交流に終わらず、キスシーンまであったりするのもいい。落ち着いたスタイルも好みだった。

ただ気になるのは、上にもちょっと触れたように、カリムが韓国語ペラペラなことだ。韓国における外国人労働者の実態はぜんぜん知らないので、これがどの程度ふつうのことなのかはわからない。彼は韓国に来てけっこう長そうだし、正規の労働者として来ている(た)が、だからといって仕送りのために働きづめの生活で、ここまでことばを習得できるだろうか。ことばが通じないと面倒という製作上の都合かもしれないが、心を通わせられる現地人を見つけるのに現地語の習得が必須だとしたら、そのハードルはかなり高いような気がする(駐在員などで来ている人だったら「ことばをおぼえるのが当然だろ」と思うけれども)。もっとも、ふたりが英語で会話しているよりは、韓国語で会話しているほうが映画としてずっと魅力的ではある。

*1:中国語音節表記ガイドラインに従った表記。今後、一般に使われている表記や作品中でのカタカナ表記と異なる場合、*をつけて付記してみることにする。