実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(瀬田なつき)[C2010-46]

角川シネマ新宿で、瀬田なつき監督の『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(公式)を観る。ときどき名前を目にして、注目の監督であるらしい瀬田なつきのメジャーデビュー作というので観てみた。内容は全く知らなかったので、タイトルからポップでほんわかした映画なのかと思っていたら、直前に「血まみれ」との噂を聞いてびっくり。血まみれは苦手だが、もう前売りも買ったし、観ないわけにはいかない(ちなみに、凄惨な部分はあるけれど、血まみれではなかった)。

原作があることも知らなくて、当然原作は未読なので、どこまでが原作に基づくものかわからず、論評しにくい。とりあえず原作のことは忘れることにする。興味深い、あるいはおもしろいと思ったのは、事件の被害者が絶対的な被害者ではなく、トラウマから加害者に転じる紙一重さみたいなものが描かれているところ。極端な設定ながら、幻想に基づく愛という、本質的で普遍的なものを描いているように思われるところ。現在部分の視点はみーくんなのに、展開されている世界観はまーちゃんのものであるところ。「嘘つきみーくん」という名前が、「嘘だけど」と言っているだけではなくて重要な部分につながっているところ。

しかしながら、現在部分のテイストが好みではない。それに、主演のふたり、まーちゃんを演じる大政絢と、みーくんを演じる染谷将太があまり魅力的に思えないため、みずみずしさがいまひとつ感じられない。特にみーくんの、なんだか悟ったような雰囲気が苦手。また『お引越し』[C1993-03]ファンとしては、田畑智子があんなになっちゃったのにいささかショックを受ける。

ノルウェイの森』っぽいという感想を聞いたのもこの映画を観た理由のひとつだが、たしかにそういう感じはあった。『ノルウェイの森』は、というより村上春樹の小説全般だけど、肝心なところが抽象的なので、わかるんだけどわからない的なモヤモヤを感じてしまうが、これはそういうところがなくひたすらわかりやすい。

最後に、これがパンダ映画であったことを付け加えておかねばなるまい。まーちゃんの部屋にはパンダのぬいぐるみが複数あり、生茶パンダもあった。フィアット・パンダも出てきたらしいけれど。