実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『地下室のメロディー(Mélodie en Sous-Sol)』(Henri Verneuil)[C1963-38]

アラン・ドロン生誕75周年記念映画祭」(公式)というのがあるという。アラン・ドロンは好きな俳優だが、そんなにたくさん観ているわけではない。とりあえずベスト3を挙げると、『冒険者たち』[C1967-07]、『若者のすべて[C1960-12]、『山猫』[C1963-10]となるが、いずれもドロンがというより作品そのものがすばらしい。今回は、あまり観ていないノワール物が観られるのではと期待したのにぜんぜんなかった。それでも未見の作品が三つあり、今週はちょうどその3本が一日で上映されるので、新宿K's cinemaまでいそいそと観に行った。

ところで、この映画祭のキャッチコピーは「アラン・ドロン、スクリーンに香るダンディズム」。チラシでは3行に分けて書かれていることもあり、ぱっと見ると「アラン・ドロン、アイスクリーム」に見える。

ちなみに、上に挙げた作品を観ればわかるようにアラン・ドロンは演技もすばらしい。ところが日本では、ただ顔がいいだけの男と軽くみられているような気がする。そしてそれは榊原郁恵のせいだと思う。

さて、1本めは、アンリ・ヴェルヌイユ監督の『地下室のメロディ』。

地下室のメロディ [DVD]

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ジャン・ギャバンアラン・ドロンがカンヌのカジノから売上金を強奪するという、豪華共演の犯罪映画。チンピラのドロンがお坊っちゃまに変身したところも見られるし、カンヌのにぎわいも見られるが、全体としては散漫な印象。必要な情報も盗みの方法も全部ギャバンが知っていて、ドロンはそれを実行するだけ、というのもつまらない。

しかしラストのプールサイドのシーンは、ドロンが追いつめられていく様子がものすごい緊張感で描かれており、目が釘づけになった。と同時に、なぜギャバンは現金受け渡しにプールサイドのような人目につく場所を指定したのか、なぜ警察はプールサイドを歩きながら支配人に事情聴取しているのか、内容がまわりの一般客に筒抜けだけどいいのか…が気になってしかたがない。たぶん超有名と思われるラストシーンはさすがに圧巻。