実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『次郎長三国志 第六部 旅がらす次郎長一家』(マキノ雅弘)

なぜかまた一ヶ月近くも映画を観られず、久しぶりの映画。今日から公開の観たい映画がたくさんあるが、まずはその前に次郎長。マキノ雅弘東宝版『次郎長三国志』は、第一部から第五部までと第八部は観ていて、今日はちょうど抜けていた第六部と第七部の二本立て。

このシリーズの前半は幸福感溢れる映画だけど、次郎長一家が旅に出て、流れ流れて行く第六部『旅がらす次郎長一家』は、全編泣きまくり(私がではなく、登場人物が)。一夜の宿が見つからずに泣き、次郎長の妻・お蝶の病気に泣き、昔世話した男の裏切りに泣き、金策のため家族に再会して泣き、最後はお蝶の死に泣く。「泣ける映画」というものが流行っているようだが、泣きたい人は、最近の安易なお涙頂戴映画ではなく、この映画に来るべきだ。

この映画で特筆すべきなのはやはり越路吹雪。マキノ監督特有の、臭くなる一歩手前のぎりぎりの芝居(というか、マキノ以外が演出したら臭くて観ていられないだろう芝居)がぴったりはまっていて、かっこいいけれどかわいらしい女性を好演している。次郎長三国志は基本的には男の映画だが、このシリーズでは女性のよさが目立つように思う。若山セツ子演じるお蝶は、最後までありえないほどの無垢な雰囲気を保ったままだし、久慈あさみはものすごくかっこいい(あまり観ていないが、他の映画では特にぱっとしない気がするのに)。