『ブルース・リー - 李小龍の栄光と孤独 -』を読み終わる。李小龍ファンでなくても楽しめる本だった。
- 作者: 四方田犬彦
- 出版社/メーカー: 晶文社
- 発売日: 2005/10/01
- メディア: 単行本
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李小龍映画は3本しか観ていないし、初めて観たのは最初のブームから25年も経ったあとである。観た感想はといえば、次のような感じだった。
- 『燃えよドラゴン』:ハリウッド映画だし英語だし全然期待していなかったが、予想以上につまらなかった。
- 『ドラゴン怒りの鉄拳』:上海で精武體育會(外観)を見ていたし、抗日映画という点で興味深かった。
- 『ドラゴンへの道』:コロセウムでの対決はロケ地選びという点で興味深かったが、コメディ色が強いのがいただけない。
遅れてきた香港映画ファンとして、李小龍を知らないことに対する引け目みたいなものがあったので、リバイバル等の機会を逃さずに観た。でもひと言でいえば、李連杰(ジェット・リー)みたいな見た目に美しい功夫のほうが好きだ、というのが正直な感想だった。
今回この本を読んで思ったのは、私が李小龍映画に熱狂しないのは、男性の鍛えた肉体に興味がないからだろうということ。しかし考えてみれば、女性が「李小龍が大好き」と言ったり書いたりしているのはみたことがない。李小龍について熱く語るのは常に男性である。本書では、女性観客には李小龍よりも成龍(ジャッキー・チェン)のほうが好まれているというアンケート結果についてふれられているが、李小龍の放つ性的魅力がなぜ女性にはアピールせず、(おそらくゲイではない)男性に強くアピールするのかという点についても考察してほしかったと思う。
ところで、最初の章に
九十年代には数多くの香港製恋愛映画が日本で公開されたが、その多くはハーレクィンロマンスめいた、うさん臭い題名を与えられていて、題名を見ただけでは簡単に香港映画であることが判別できない仕組になっていた。
とある(p. 18)が、これは事実だろうか(配給会社の姿勢やろくでもない邦題に文句を言いたい気持ちはわかるが)。まず「香港製恋愛映画」というのがほとんど思い浮かばないのだが、90年代に香港映画が多く公開された背景には、1993年くらいから香港返還に向けての香港ブーム、アジアブームがあったので、香港映画とわからなければ意味がないと思う。実際、多くの映画には原題がサブタイトルとしてついていたり、頭に「アンディ・ラウの」といった修飾がついていたりして、ひと目で香港映画とわかることが多かった。もっとも「香港製恋愛映画」というのがプレノンアッシュ配給の王家衛(ウォン・カーウァイ)映画を指しているとしたらそれなりに納得するが、「数多く」はないですよね。