実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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“Maryan”(Bharat Bala)[C2013-18]

PVR Koramangalaで、Bharat Bala(バラト・バーラー)監督の“Maryan”(facebook)を観る。タミル語。Dhanush(ダヌシュ)主演。

  • インド映画は、基本的にスターで観るものである。タミル映画、カンナダ映画、テルグ映画などはその点つらい。もともと俳優を知らないし、ポスターなどを見ても太めの体に濃い顔なので、「ちょいと観てみようか」という気にならない。だからどうしてもボリウッド優先になってしまうが、少しずつ南インド映画の知識も広げていきたい。ということで、ボリウッドデビュー作の“Raanjhanaa”(id:xiaogang:20130623#p2)で憶えたダヌシュ主演のタミル映画を観る。ダヌシュはボリウッド俳優のような派手なイケメンではないが、南インド俳優にはめずらしく、線が細くて顔も濃くないのがいい。
  • 冒頭にスーダンの建設現場での出稼ぎシーン。前半はタミル・ナードゥ州のキリスト教の漁村が舞台の、出稼ぎに行くまでの話で、漁師のMaryan(ダヌシュ)がPanimalar(Parvathi Menon/パールヴァティ・メーノーン)とくっつくまでがメイン。彼女が借金のカタに高利貸しと結婚させられそうになって、助けるためにスーダンに出稼ぎに行くのだが、2年間の年季奉公はあっさり終わり、身代金目的で武装集団に誘拐されて、そこから逃げる話が後半。話としては後半がメインなのだろうが、海辺に教会のある漁村の雰囲気がよく、前半の印象が強い。アフリカロケの後半は雰囲気が一変して砂漠などが舞台だけど、最後に海が出てきて、Maryanが海の男であることがしっかり活かされた展開に感心した。
  • 実話に基づいているらしいので、それなりに調査や取材をしているとは思うが、ライフルを振りかざして雄叫びをあげるアフリカ人武装集団などがステレオタイプに感じられた。また、いっこうに金になる気配のない人質が逃げたからといって、執拗に追いかける必然性がよくわからなかった。
  • 歌やダンスはそれほど多くはないが、前半の海辺のダンスシーンは盛り上がる。歌う海の男がモテる話ということで、鈴木清順の『海の純情』を連想。あのあたりの歌謡映画の、いきなり歌う唐突感も、インド映画のなかに置いてみれば違和感がない。音楽は、みなさまご存じA. R. Rahman(ラフマーン)で、ダヌシュは歌も歌えるらしいが本作では歌っていない。
  • 後半、Panimalarが結婚を断った男に襲われそうになるシーンがあって、結果は異なるけれど『鶴は翔んでゆく』や『海辺の女たち』を思い出した。ヒロインの一途な雰囲気みたいな点にも共通するものを感じるので三本立てで観たい。
  • 漁村のダヌシュはちょっとルンギ萌えな感じだったけれど、後半は破れたランニングシャツ着たきり雀でボロボロ。ヒロインは貧しくてもやっぱり衣装は取っ替え引っ替え。
  • 撮影は、マチュー・カソヴィッツの映画も撮ったりしているMarc Koninckxを呼んできたりしているからか、美しいロングショットなどもあった。
  • アフリカのシーンで豹が出てくるけれど、豹は着ぐるみでもCGでもなく、ちゃんと本物ですよということを証明するために(ほんとか?)、エンドロールでそのシーンのメイキング画像が流されている。