シアター・イメージフォーラムで、モンテ・ヘルマン監督の『断絶』を観る。1995年にリバイバル上映されていたのは憶えているが、観なかったのはたぶんレイトショーだったからだ。
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- 発売日: 2007/04/11
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ザ・ガールが3人の男の間を行ったり来たりしながら、二台の車がお互いの車を賭けてワシントンD.C.まで長距離レースをする、というのがいちおうのお話だが、レースはしばしば中断され、本気でワシントンD.C.に向かおうとしているのかどうかすらわからない。4人はそれぞれ、挫折とか喪失感とかいったものを抱えているらしいが、それらは一切描かれない。時代的に学生運動とかヴェトナム戦争とかを連想したりもするが、具体的なことはぜんぜんわからない。GTOは二人組を「クルマが命というタイプ」と断言するけれど、そのようにも思われない。ふたりはぜんぜん笑わないし、『頭文字D THE MOVIE』みたいなワクワク感も、主人公の成長もない。あるようなないようなストーリーの隙間を殺伐とした虚無的な空気が満たしていて、この雰囲気にとても惹かれる。
だからといってただ殺伐としているわけではなく、随所におかしさが滲みでている。まず、GTOがヒッチハイカーたちに語る、毎回違うウソの身の上話。最初のほうは元ネタもわからないが、次第に「これはレースで勝って手に入れた車だ」などと言いだし、身の上話の創作過程が垣間見えるのがおかしい。さらに、なぜか2回もあるトイレネタ。旅にトイレはつきものなので、トイレネタが出てくるだけでうれしいが、傍から見るとおもしろいけれど自分が遭遇したら恐怖、というネタなのがたまらない。
いっぽう観ていて辛かった点は、まず第一に、ジェイムズ・テイラーとデニス・ウィルソンの顔が咄嗟に判断しづらかったこと。ひとりで出てくると、「どっち?どっち?」と思って焦った。ふたりの服が決して変わらないと確信してからは、まず服で判断してから顔を確認するようにしたので楽になった。第二に、会話の内容がクルマの話になると、ほとんど一言も意味がわからなかったこと。