実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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“Lucia”(Pawan Kumar)[C2013-26]

PVR Koramangalaで、Pawan Kumar(パワン・クマール)監督の“Lucia”(facebook)を観る。カンナダ語。3日ぶり二度め(前回はid:xiaogang:20130908#p2(感想なし))。前回は超寝不足で、最初からうとうとして断片的にしか観られなかったが、断片的に観てもおもしろかったので再見しに来た。

  • この映画は、クラウドファンディングで作られた低予算映画だということと、London Indian Film Festival 2013(公式)に出品されて観客賞を獲っている(長篇の賞は観客賞しかないみたいだ)ということで、一般的コテコテカンナダ語映画(そういうのを観たことがないけれどそういうイメージ)とは一線を画していると思われる。映画祭に出したからか、英語字幕がついていてよかった。
  • 昏睡状態で機械の力で生命を維持している男がいて、そこに至るまでの経緯を振り返る、というふうに映画は始まる。映画館で働いている不眠症の男がLuciaという怪しげな睡眠薬を手に入れて、好きな夢を見られるようになり、その夢をところどころ挿入するような形で映画は進んでいく。最初はカラーのパートが現実で、男が人気俳優であるモノクロのパートが夢であるかのように描かれていくのだが、やがて夢と現実は互いに浸食しあい、めまぐるしく行き来しはじめる。さらに、モノクロパートで俳優が撮りたいと思っている映画、カラーパートで映画館主が昔撮った、リリースされなかった映画といったものも絡み、どれが夢でどれが現実でどれがフィクションなのか、どれが過去でどれが現在なのか、世界はいったいいくつあるのか、次第に混沌としていく。おそらく論理的なひとつの解があるわけではなく、様々な解釈を楽しむ映画だと思う。
  • カラーパートに出てくる着ぐるみのエピソードに泣かされるのだけれど、あの着ぐるみはどうしてあんなに哀愁を帯びた表情をしているんだろう。
  • 主人公が勤める映画館の館主が、寂れても「カンナダ語映画しか上映しない」と言っていたり、誰にも観られなかったフィルムを大事にしまい込んでいたりするところに、監督の映画に対する思い入れみたいなものが感じられた。また、案内人がいて二階席があって…という古い映画館に対するノスタルジーみたいなものも込められているように思う。
  • 舞台はバンガロールだけど、わかる場所は全然出てこなくて、なんだか知らない街のようだった。出てくる映画館が気になるけれど、寂れた感じだったし、劇中で中を飾りつけたりしていたので、おそらく現在は使われていないのだろう。ヒロインが働くPapa John's Pizza(公式)は、市内にたくさん支店があってどれかわからないけれど、うちのわりと近くにもあるようなのでそのうち行ってみよう。あまりおいしそうには見えないけれど。
  • 日曜日(公開3日め)の午前中に観に行ったときはすいていたので、平日の午前中なら当然すいているだろうと思ったら、まさかのほぼ満員。いま学校が休みなのか、大学生くらいの男性グループが多かったが、始まる前からやたらとうるさい。ふだんの客層とも映画のイメージとも違うなあと思っていたら、予告篇から異様な盛り上がり。上述のようにクラウドファンディングで製作されているので、co-producersとかなんとかに大勢名前が連なっているのだが、そこでも大受けだったので、彼らはその一部なのだろうか。映画が始まってからも、ところどころで異様に盛り上がってひゅーひゅーぴーぴー言っているし、初見ではないらしく“I love you”などの台詞をワンテンポ早く叫ぶし、ミュージカルシーンは歌ってるし、ほとんどマサラ上映状態(さすがに踊ったりクラッカー鳴らしたりはない)。かなり異様な体験だった。