ユーロスペースで、ロベール・ブレッソン監督の『白夜』(公式)を観る。1ヵ月ぶり二度め(前回はid:xiaogang:20121104#p2(感想なし))。
- ドストエフスキーの『白夜』を、当時のパリを舞台に移しかえたもの。
- 原作は、主人公の青年の妄想部分がかなりしんどかった。ヴィスコンティ版ではばっさりカットして観やすくしていたが、ブレッソン版では逆にそこを独自にふくらませて、映画らしくきれいな女性をたくさん登場させたり、テープレコーダーという当時らしい小道具を使ったりして、妄想大爆発状態なのがなかなか楽しい。
- ヴィスコンティ版はなぜか、男ふたりにマルチェロ・マストロヤンニとジャン・マレーという、(わたしの好みではないが)世界二大美男みたいな俳優を配置していたが、ブレッソン版ではどちらもいまひとつぱっとしない男で、そのほうがリアル。いっぽうヒロインは、ヴィスコンティ版のマリア・シェルは純粋無垢っぽすぎて浮世離れしていたが、ブレッソン版のイザベル・ヴェンガルテンは、翳りのある目つきに少し上を向いた鼻と、とにかく魅力的。ファッションもかわいい(でもなぜ毎晩同じ服で来るんだろう?)。
- すぐ脱ぐヒロイン、マルトに、いきなり胸をまさぐる青年、ジャック。原作やヴィスコンティ版と違って、まさかのエロエロ展開なところがこの映画のキーポイント。マルトの裸がすごく美しく撮られているのも印象に残る。
- とにかく、夜のパリが美しい。タイトルバックの、車のライトが幻想的に映るシーンにまずは釘付け。セーヌ川の観光船なんて醜悪なものと思っていたが、当時はまだあまりケバくないこともあり、船が行くシーンも美しい。そして船そのものよりも、川を見ているふたりの顔を、船の灯りが通りすぎていくところがとりわけ美しい。
- ジャックとマルトは座って話すシーンが多いけれど、歩いているシーンもいくらかあり、そこで『欲望の翼』の張曼玉(マギー・チャン)と劉徳華(アンディ・ラウ)が夜の香港を歩くシーンを連想した。あれも、別の男を好きな女の話を延々聞く、というシーンだし、ちょっと『白夜』を意識してたんじゃないかと思う。
- ポン・ヌフで第一夜、第二夜…と話が進むのを見ると、たしかにちょいと洪尚秀(ホン・サンス)に撮ってみてもらいたくなるね。