実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『青い館(The Blue Mansion)』(Glen Goei)[C2009-59]

シネマート六本木のSintok2012シンガポール映画祭(公式)で、グレン・ゴーイ監督の『青い館』を観る。

  • パイナップル王から不動産王になった大富豪が亡くなるが、成仏できずに鬼になって現れ、葬儀の成り行きを見守るというコメディ。彼の評判はすこぶる悪く、葬儀のやり方から会社の後継者まで、残された家族は争いが絶えない。やがて殺人事件の疑惑がもち上がり、捜査が行われるなか、家族がそれぞれ抱えていた秘密が明らかになる。
  • 癖のある登場人物が魅力的で、ブラックな笑いがつまった楽しい映画だが、主人公が自分の横暴な行いを悔い改めるという教訓話に収束していくのが気に入らない。ただし、死んでから改心しても遅く、ずっと鬼のまま、という終わり方はよかった。
  • 物語のほとんどは、大富豪の屋敷である、通称「ブルー・マンション」で進行する。想定はシンガポールだと思うが、ロケ地はマレーシアのペナン島にある張弼士府第(チョン・ファッ・ツィー・マンション)。現在はホテルになっていて、2008年に泊まったここを見るのが最大の目的。建物のファサードや前庭、一階の共有部分など、屋敷がたっぷり見られて大満足。いちばんウケたのは、螺旋階段でセックスするシーン。ちなみにチョン・ファッ・ツィー・マンションは、建物が立派なわりにはリーズナブルで、朝ごはんがおいしいホテルだった。
  • パイナップルで財をなした富豪という設定なので、家のなかに金でできたパイナップルの置物がたくさんある。いかにも華人の金持ちらしい趣味の悪さだが、パイナップルはちょうど果肉が黄金色だし、実はひとつほしい。また、自社製品なのか、メイドさんがパイナップルタルト(タルトといっても大量生産の小さいお菓子)を食べていて、ペナンかシンガポールに売っていたらおみやげに買いたいと思った。
  • 言語がほとんど英語なのが残念なところ。葬儀屋さんが福建語(たぶん)を話すところがあったので、大富豪一家は実際に英語で会話しているという想定なのだろう。その英語がまたシングリッシュではなく、まっとうな英語なのがつまらない。
  • 一族のなかで唯一まっとうな人物として、自殺した長男の前妻も鬼となって出てくるのだが、彼女の血まみれフルヌードがあってびっくり。一部マニアの人はうれしいかもしれないが、何かムダにヌードになっているように思われてならない。この女優(エマ・ヨン)が最近若くして亡くなったというのにもびっくり。
  • 予測していないところでゲイネタが出てきてうれしい驚き。突然、マッチョな男性グラビアがたくさん載っている雑誌が出てきてウケた。次男のほうがゲイっぽく見えたけれど、それはまだまだ修業が足りないということだろうか。