実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『宇宙大怪獣ギララ』(二本松嘉瑞)[C1967-37]

シアターN渋谷で、二本松嘉瑞監督の『宇宙大怪獣ギララ』を観る。

あの頃映画 「宇宙大怪獣ギララ」 [DVD]

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松竹と日活による不遇な怪獣映画の生誕45周年記念二本立て。怪獣映画なんて北朝鮮の『プルガサリ 伝説の大怪獣』[C1985-49]くらいしか観たことがなく、別に興味もないのに、J先生が「ぜったい行く」と言うのでつきあうことに。

まずは松竹の『宇宙大怪獣ギララ』。何の前知識もなく観たが、監督も知らない人だし、和崎俊也とか原田糸子とか、「誰ですか、それ?」な主演俳優。園井啓介にさえ「知ってる人が出ていた安心感」を感じたが、その園井啓介は、今回は正義漢ではなく、さっさと宇宙病にかかって離脱するヘタレであった。そんないかにも力が入ってなさそうなキャストのなかに、なぜか出ている岡田英次様。FAFC(日本宇宙局)所長で、スーツが似合ってめちゃくちゃかっこいい。彼が出ているときだけ画面がしまる。あと、緊迫感がまるでない対策本部長として北竜二も出ていた。

月にステーションがあり、火星にも行こうという時代なのに、近未来的雰囲気が全くないアナログ感がほほえましすぎる。対策本部に関東の地図が貼られていて、ギララが現れたという情報が入るたびに、赤いギララ型の駒(?)を動かしたり、被害に応じた大きさのマークを貼り付けたりしていて、しかもその専任要員が動く梯子みたいなのに乗って待機しているのがおかしい。あれは、選挙のときに当確が出た候補者に花をつけるのから連想しているのかなと思った。ギララが街を破壊しつくしているというのに、迅速に情報を送る人がいるのと、びくともしないらしい通信網が不思議だ。さすが近未来。

宇宙船の外観もけっこうかわいいし、時々ミニチュアにしか見えない特撮もほほえましく、CG使いまくりの最近の映画に比べたらよほど楽しめる。ギララもけっこうかわいいけれど、怪獣がかわいいのは、ほんとうは小さくて人が入っているからだよね。ツッコミどころをあげたらきりがないが、ほとんどドイツ人女性研究者(ペギー・ニール)ひとりの分析とアイデアと実験でギララが退治され、しかもかなりの設備や人員が要りそうな研究開発が数日程度のスピードで行われるのがすごすぎる。

この種の映画は、とりあえずロマンスを絡めて最後に教訓もどきをたれないといけないらしいが、「愛には勇気が必要なんだ」「そう、それをギララが教えてくれたの」ってアホか。おかしくて涙がちょちょぎれた。東日本大震災どころではない、膨大な犠牲と被害が出ているはずだが、その痛みとかやりきれなさとかいったものは全く描かれていない。ただ、「命をかけて愛する者を守る」みたいなウザい登場人物がぜんぜん出てこないところはいい。

ところで、入口がちょっとだけ出てきた箱根ホテルは本物でしょうか?