実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『秘録おんな寺』(田中徳三)[C1969-36]

神保町シアターの特集「監督と女優とエロスの風景」(公式)で、田中徳三監督の『秘録おんな寺』を観る。

安田道代が潜入警官ならぬ潜入尼となって、徳川家ゆかりの尼寺で秘かに行われている犯罪を暴こうとするお話。潜入ものというのは、最初に経緯が示されて潜入するか、終盤になって「実は潜入していました」というのが明らかになるかどちらかだと思う。これは中盤あたりで、ヒロインがいきなり「実はわたしは…」と身の上や経緯を全部話すという構成なのが納得しかねる。

また、犯罪だけでなく、尼寺で秘かに行われているエロティックな儀式やお仕置きを紹介する映画でもあるのだが、その点も中途半端である。紹介される儀式やお仕置きは三つくらいしかなく、「着物を脱いで」と言うわりに、下半身は長い腰巻きに覆われていて、「え、それはそのままなの?」と観客の期待を裏切りまくり、お仕置きシーンも退屈。もしも監督が石井輝男だったら、いちいちセンセーショナルな名前をつけたお仕置きを多数、詳細な手順とともに紹介してくれただろうと思うと、なんとも欲求不満な気分である。

しかし、安田道代の尼姿はなかなかいい。やはり彼女はやたらとカラダを出さないほうがよく、尼のようなシンプルなファッションが、かわいらしさとエロティックさが同居している感じをうまく引き立てる。ほかの尼さんたちはほとんど知らない女優で、中原早苗だけが別格。その存在感は他を圧倒しているのに、ナンバー2の中間管理職的尼なのが不満。もっと思いっきりいやらしくていじわるな尼にしてほしかった。将軍の従妹だとかいう門跡紫月院(しめぎしがこ)は、ズベ公にしか見えず、気品のかけらもなかった。