実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『転山(轉山)』(杜家毅)[C2011-18]

TOHOシネマズ六本木ヒルズで、杜家毅(ドゥ・ジャーイー/ドゥー・ジアイー*)監督の『転山』(東京国際映画祭/公式(中国))を観る。第24回東京国際映画祭コンペティション部門の一本。

台湾の大学生、張書豪(チャン・シューハオ/ジャン・シューハオ*)が、急死した兄の遺志を継ぎ、麗江から拉薩まで自転車で走破する話。かなり過酷な撮影もしているロードムービーだが、わたしはチベットに興味がないし、大自然雄大な景色にも興味がない。食べるアイスクリームには興味があるが、見るアイスクリームには興味がない。しかも特に映像が美しい映画でもなかったので、チベットの風景には特に心を動かされなかった。張書豪がなかなかのイケメンだということを示したことが、映像面でのこの映画の唯一の功績である。彼の成長は主に顔で表されていて、冒頭ではいまひとつパッとしなかった彼の顔は、どんどん凛々しくイケメンになっていく。

お話的には、まず旅の動機が兄の死というのが弱い。わたしは兄弟がいないのでわからないが、大学生にもなって兄弟の死にそれほどショックを受けるものなのだろうか。兄の夢を生前に聞いていたとか、いっしょに行く約束をしていたとかならともかく、自転車に乗る趣味もなかった青年が、死後に計画を記したノートを見つけてそのとおりに実行するなんて、兄想いというより、どれだけ主体性がないんだという感じがする。

旅を通しての張書豪の成長は、人との出会いとかそういうこともあるけれど、基本的には過酷な経験とその際の自然や自分との闘いによってもたらされるはずだ。ところがこの映画では、彼が過酷な経験をするといつも、さてこれからどうするかというところで次のシーンになり、そこではすでに危機を脱している。納得いかない。

前半いっしょに旅をする李曉川(リー・シャオチュアン/リー・シアオチュワン*)は、強面なのにお菓子好きで、なかなか興味深いキャラクターだった。

上映後、杜家毅監督、張書豪、李曉川、チベットの未亡人を演じていた李桃(リー・タオ*)をゲストにQ&Aが行われた。