実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『運命の死化粧師(命運化妝師)』(連奕琦)[C2011-11]

TOHOシネマズシャンテで、連奕琦(リエン・イーチー*)監督の『運命の死化粧師』(東京国際映画祭/公式(台湾))を観る。第24回東京国際映画祭のアジアの風部門アジア中東パノラマの一本。

ヒロインの吳敏秀(謝欣穎)が、高中時代に恋愛関係にあった音楽教師・陳庭(隋棠)と、死化粧師と死体として運命的に再会し、同時に、妻の過去を探っている陳庭の夫・聶城夫(吳中天)とも運命的に出会う、というお話。陳庭の死因に疑問を抱かせ、敏秀をその真相解明に向かわせるため、もうひとり刑事の郭詠明(張睿家)を関わらせているが、かなり無理矢理っぽく感じられ、脚本の練りが足りない気がする。冒頭で、衛生管理や科学的手法を導入した新しい死化粧師の仕事が紹介されていて興味深いが、後半は敏秀が死化粧師であることはほとんど関係なくなってしまうのも残念なところ。陳庭の死化粧の過程で死因に疑問を抱くといった展開にはできなかったのだろうか。

映像は落ち着いていて悪くないし、学校の空気も感じられる。回想シーンで敏秀と陳庭がいっしょに過ごす、鉄塔の見える風景もいい。ただ、このふたりの恋愛描写にしても、陳庭と聶城夫の夫婦生活にしても、あまりにもイメージだけで語られ、実質がどんなものだったのかがつかめない。

謝欣穎(ニッキー・シエ/シエ・シンイン*)は、『アリスの鏡』[C2005-42]でもすごくかわいかったが、今回はああいうガーリーな雰囲気ではなく、パンツスーツのメガネ女子。これはこれで『あした晴れるか』[C1960-42]のいづみさまを彷彿させて悪くない。回想シーンのなんちゃって女子高生も無理なくこなしている。

隋棠(ソニア・スイ/スイ・タン*)は、上映前の舞台挨拶でどこのキャバクラのおねえちゃんかと思ったので、映画でもいまひとつ印象が悪かった。映画の中ではきれいな音楽の先生だったのだけれど。張睿家(ブライアン・チャン改めレイ・チャン/ジャン・ルイジア*)は、上述したように役柄設定に無理があり、あまりぱっとしない感じだった。

舞台は台中。ここ数年は高雄映画ブームだったが、昨日の『あの頃、君を追いかけた』[C2011-08]は彰化だったし、これから中部ロケブームがくるのだろうか。台中は都市の大きさのわりに映画が撮られておらず(名古屋が舞台の映画があまりないのと同じだ、たぶん)、したがってあまり行く機会もないので、もっと撮られるといいかもしれない。

上映前に舞台挨拶、上映後にQ&Aがあったが、トータルの時間は同じらしかったので、Q&Aだけにしてもらいたい。ゲストは、連奕琦監督、謝欣穎、隋棠、脚本の于尚民(ユー・シャンミン*)。司会が石坂さんや松下さんだと安心して見ていられるが、今回はわたしの神経を逆なでしまくる司会者だったので朝からどっぷり疲れた。