バンガロールに来ちゃったの

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『ある母の復讐(與愛別離)』(林孝謙)[C2010-67]

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2011(公式)で、林孝謙(ギャビン・リン/リン・シアオチエン*)監督の『ある母の復讐』を観る。

舞台は1978年の高雄。高雄加工出口區のおもちゃ工場で働く3人の男女をめぐるメロドラマ。真面目そうな男・國威(尹昭徳(イン・チャオトー/イン・ジャオドー*))と、ちょっと楊靜怡(リサ・ヤン)似の家庭的な女工さん・玉華(曾珮瑜(ペギー・ツァン/ツォン・ペイユー*))と、劉嘉玲(カリーナ・ラウ)みたいな社長令嬢・順芳(周姮吟(チョウ・ハンイン/ジョウ・ホンイン*))は、同じ工場で働く仲良しで、女性ふたりは幼なじみ。國威は玉華と結婚するが、順芳と浮気して、ふたりがほぼ同時に妊娠…というドロドロなお話。産まれた娘のひとりは李康宜(リー・カンイー*)似、と思ったら本人だった。

「入れ替わってしまった赤ん坊」 という赤シリーズ系メロドラマの最強モチーフを、故意に交換するというようにアレンジしたところはおもしろい。しかしながら、修羅場で泣きわめく演出、アップの多用、盛り上げ音楽のタレ流しという、悪しきメロドラマ三点セットを完備している点が好みではない。Q&Aで監督は、「最近は感情を表出させない傾向にあるけれど、あの時代の人々はもっと感情を表出していたと思う」と語っていたが、表出していてもそこは映画には描かないのがわたしは好きだ。不倫シーンが省略されているのはいいな、と思っていたら、あとで夢に出てきたりしてがっかり。

また、メロドラマは見た目も重要だと思うのだが、國威はきれいな女性ふたりからモテるように見えないところが厳しい。同じ俳優が20代から50代くらいまでを演じているが、分量的には20代がメインである。それを40過ぎの尹昭徳にやらせる時点で終わっている気がする。それに、いくら70年代でも、いくら真面目な工場勤めでも、髪型やファッションをもう少し若々しくかっこよくすべきだ。

復讐と赦しがテーマということで、 子供を取り替えた/取り替えられたふたりの女性は、苦悩したのちに赦しへと至る。その過程がほとんど描かれないのも不満だが、気になるのは、赦しを請わねばならないのは國威だろうということだ。だいたいこの男は、玉華を追いかけているうちは順芳の気持ちに気づきもしなかったくせに、玉華を妻にしたとたん、ちょっと順芳の脚を見ただけで欲情して(ムスリムでもないのに)浮気するというとんでもない男。最初は順芳に堕ろせと言って、玉華にバレて家出されると順芳と逃げて、玉華と偶然再会すると「君を探していたんだよ」と言ってしまうどうしようもなさ。結局離婚して順芳と結婚するのも、条件のいいほうについたといえなくもない。この男の心理をもう少しちゃんと描いてほしかったと思う。

舞台の高雄は、加工出口區高雄園區のほかは、蓮池潭や高雄圓山大飯店などがちらっと出てきた。 愛河を渡る橋も出てきたが、どの橋かまでは特定できず。郊外のいい感じの風景もいくつかあったが、いずれもほんのわずか。一ヵ所は鳳山のようだった。

上映後、林孝謙監督と脚本の呂鑨謚(エルメス・リュ/リュー・ロンシー*)をゲストにQ&Aが行われた。