実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『それから After All These Years(其後)』(林家威)[C2009-47]

オーディトリウム渋谷の特集「KINO TRIBE 2011 独立映画宣言!」(公式)で、林家威(リム・カーワイ)監督の『それから After All These Years』を観る。スタイル的には好きなタイプの作品で、つくりもおもしろい。

北京近郊の町に、アジェ(大塚匡将)の来訪が三度繰り返される物語。登場人物や場所は同じだが、アジェはそれぞれ別人のようであり、前とはつながりのない異なる物語が展開される。パラレルワールドともいえるが、主要な登場人物のひとりである食堂の娘が、第一話:妊娠していない、第二話:妊娠している、第三話:赤ちゃんが生まれている、となっているので、時間的にはパラレルではなく、先に進んでいると思われる。もちろん、それぞれの世界で彼女の境遇が異なるという解釈もできるが、どうも彼女の妊娠・出産はつながっているとしか思えない。そこがとてもおもしろいと思った。

全体としてもそうだが、特に不条理劇みたいな最初の話に、監督の中国批判みたいなものが感じられる。具体的な事件や事象と関連したものなのか、もっと抽象的なものなのかはよくわからなかったけれど。わりとストレートな感じに、監督が中国の中の人ではなく、マレーシア華人という外の人であることが現れているように思った。様々な解釈が可能な作品だが、今日は体調が悪くてけっこうぼーっと観てしまったので、深読みには至らなかった。また繰り返し観る機会があればいいと思う。