実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『遙かなるふるさと 旅順・大連』(羽田澄子)[C2011-02]

岩波ホールで老人に囲まれて、羽田澄子監督の『遙かなるふるさと 旅順・大連』を観る。もうちょっと気のきいたタイトルにできないのかな。

大連生まれ、旅順・大連育ちの監督が、2009年の旅順の完全開放後に、ツアーで旅順・大連を旅して撮ったドキュメンタリー。監督の生い立ちと旅順・大連との関わり、それに当時の歴史的背景をわかりやすく取り入れた旅日記である。ロシアや日本が作った戦前の近代建築が数多く残っている一方で、第二次世界大戦後は中国の都市として発展してきた旅順と大連(ちなみに現在は、旅順も遼寧省大連市の一部である)。懐かしい思い出の場所を訪ねながらも、映画は淡々と進む。悪くいえば、対象に対して十分踏み込んでいない、あるいは踏み込むことをためらっているように見える。しかし、個人的なノスタルジーを過度に押しつけたり、現在の旅順・大連を過度に美化したり、あるいは反対に変化を過度に嘆いたりしない、客観性を失わず、気負いのない姿勢が好ましいともいえる。

わたしがこの映画を観た主な理由は、10年ほど前に大連を訪ね、ロシア時代、日本時代の建物をたくさん見てきたので、それらがどうなっているかに興味があったから。映画はどちらかといえば旅順が主だったので、大連部分は少し物足りなかったが、旧・大広場(中山廣場)(LINK)、旧・大連第二埠頭船客待合所(大連港候船廳)(LINK)、旧・満鉄大連医院(LINK)、旧・大連駅(大連站)、旧・満鉄中央試験所(LINK)などが出てきた。大連飯店や旧・大連自然博物館(LINK)も写ったと思うし、ほかにもいくつか、わたしが訪ねたところが出てきたと思う。露西亜町や南山麓は、訪ねたときから大分変わっていそうだった。

旅順については二百三高地など山のイメージしかなかったが、ちゃんと街があった(あたりまえだ)。日露戦争の戦跡にはあまり興味がないが、近代建築がたくさんあるし、大連よりものんびりした感じなので、いつか行ってみたい。

ところで、旅順も大連も、犬猫、特に犬がやたらと目についた。流浪犬ではなく、飼い犬が自由に出歩いているみたいに見えたが、わたしが行ったときはそんなことなかったような気がするのだけれど。