シアター・イメージフォーラムで、エズミール・フィーリョ監督の『名前のない少年、脚のない少女』(公式)を観る。現実の世界とネットの世界が交錯する美しい映画。
舞台はブラジル南部、ドイツ系移民の住む小さな町。主人公は思春期の少年。退屈な日常、ドイツ系の伝統を残す小さな町の閉塞感、ここから出て行きたいという思い、ボブ・ディランや外の世界への憧れ、ネット上の時間のない世界にいる少女への思い、ネットと現実の世界をつなぐ青年との出会い…といったものが交錯し、絡みあっている。美しい映像やゆったりしたスタイルも好み。
ブラジル南部だし、着ているものからけっこう寒い季節だと思われるし、ドイツ系移民ということでダンス・パーティのシーンなどはチロルっぽい雰囲気で、灼熱のブラジルといったイメージとはほど遠い。しかし寒そうな雰囲気のわりに、茶色っぽい水の流れる大きな川や自転車で走る田舎道などが、どこかマレーシアを思わせる。そのせいか、ただ美しいというだけではなく、風景にすごく惹かれるものを感じた。