実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『純情部隊』(マキノ雅弘)[C1957-37]

同じくフィルムセンターの特集「よみがえる日本映画」(公式)で、マキノ雅弘監督の『純情部隊』を観る。

主演が力道山東千代之介というあまりのショボさに、「観なくてもいいか」と思ったけれど、まだマキノ制覇の夢は捨てていないし、観ろといわんばかりのスケジュールだったので観た。これは観て正解。すごく楽しくハッピーな映画だった。

前半の舞台は終戦直前の軍隊。スポーツや芸能界、あるいはビジネスでは活躍しているが、軍人としては使い物にならない新入り二等兵たちを面白おかしく描いたもの。ここはマキノが戦中に撮っていたホネ抜き国策映画の趣き。

後半は5年後のクリスマスに軍隊仲間が再会する話で、こちらがメイン。物分りのいい見習い士官だった東千代之介が大スターの東千代之介になっていたり、みんな元の世界に戻って活躍しているなか、相撲をやめた力道山だけが落ちぶれていた。そんな力道山をみんなでプロレスラーにしようとする話。クライマックスは、軍隊時代のいぢわる軍曹と力道山のプロレス対決。功夫ならいくらでも楽しく見ていられるが、さすがにプロレスはしんどくて、最後のほうは退屈した。

力道山と、相撲の親方の娘、星美智子とのメロドラマもストーリーに絡めてあり、戦後ふたりが再会するシーンがある。そこで星美智子は王道的マキノ式メロドラマを演じているのに、相手の力道山健さんもびっくりなほどぼーっとしているのが笑えた。

ディック・ミネがキャバレーの人気歌手で、クリスマスの夜に『夜霧のブルース』などを歌ってくれて楽しい。だが欲をいえば、軍隊時代にも歌うシーンがほしかった。進藤英太郎も社長役で健闘。軍隊仲間ではないが、力道山の相撲の弟弟子役でやまりんこと山本麟一も出ている。