実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『黒く濁る村(7이끼)』(康祐碩)[C2010-40]

フィルメックス閉会式の前に、丸の内TOEIで康祐碩(カン・ウソク)監督の『黒く濁る村』(公式)を観る。原題は“苔”だが、めずらしく邦題が秀逸な映画。内容にも合っているし、観る気もソソる。「黒く濁る××」って、いろんなところで使えそう。

朴海日(パク・ヘイル)が、父親が移り住んでいた村に赴き、その死の真相を探るというお話。怪しげな宗教施設、人心を掌握することに長けた父親、異様な容貌の男たち、そして謎の美女。いかがわしさ、おどろおどろしさ、オカルトっぽさなどが満載の前半は、観客を惹きつけ、期待をいだかせる。

しかし、真相が次第に明らかになる後半は、結局単なる人間の欲得の話になって魅力が半減する。そのうえこの部分が長く、いいかげん飽きる。

最後のどんでん返しは悪くないし、そこでまた謎解きをしたりせず、疑惑を投げかけて終わるのもいい。でもそれなら、後半の謎解き部分をもう少しコンパクトにしてもいいんじゃないかと思う。161分もあるけれど、どうしても必要な長さとは思われない。

主人公は、真相を究明しようとする過程で命を狙われ、次々に危険な目にあう。だから、主人公に感情移入して、「がんばれー」と思いながら観るのが基本だと思う。でも朴海日ってぬるっとした感じで、そのように思わせる魅力に欠ける(少なくともわたしにとっては)。

個人的には、主人公とケンカしながらも助ける検事(劉俊相/ユ・ジュンサン)のキャラが好きだった。でもこのふたりには、もう少しアヤしい雰囲気がほしかったですね(それにはやっぱり配役が…)。