実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『わたしを離さないで(Never Let Me Go)』(Mark Romanek)[C2010-25]

東京国際映画祭22本めは、同じく六本木ヒルズマーク・ロマネク監督の『わたしを離さないで』(TIFF紹介ページ/公式)。コンペティション部門の一本。

空いている時間に上映があり、説明を読んだらわりとおもしろそうだから、というのがこれを観ることにした理由。カズオ・イシグロの小説の映画化だが、原作は読んでいないので、単純に映画としての感想である。

まずは、静かでシンプルな語り口に好感をもった。時代が過去に設定されており、キャシー、ルース、トミーの3人が育つレトロな雰囲気の寄宿学校は、舞台がイギリスであるだけに、アジア映画にありがちなマンガチックなものとは違い、本物の香りがそこはかとなく感じられるのが魅力的。それでいてふつうの学校ではない不穏な空気が、どことなく流れている感じがいい。

彼ら3人はふつうの人とは違うというSFっぽい設定がなされているが、それはあくまで、彼らの運命があらかじめ決定されているという状況をつくりだし、命の儚さみたいなものを表現するためのものである。しかしそうであるならば、大人になった3人の再会やキャシーとトミーの恋が、もう少し運命に導かれるような形で展開したほうがいいのではないか。このあたりは、ルースの台詞に頼りまくり、非常に説明的、段取り的にストーリーが展開する。小説はそれでもいいかもしれないが、映画はもっと映像で見せていくようにしたほうがいいと思う。

大人になった3人を演じるのは、キャシー=キャリー・マリガン、ルース=キーラ・ナイトレイ、トミー=アンドリュー・ガーフィールドキャリー・マリガンが、透明感というのとはまた違った独特のやわらかさのようなものをまとっていてとてもいい。この3人はいずれも人気スターのようだが、わたしはだれも知らないので、この映画のうれしい出演者といえばシャーロット・ランプリング様である。終盤、キャリー・マリガンシャーロット・ランプリングが対決(?)するシーンは、異様な緊張感がみなぎっていて感動的。

上映後、マーク・ロマネク監督をゲストにQ&Aが行われた。原作も監督も主演俳優も知らないので、何か得るところがあるかもしれないと思って出てみたが、逆に知らないとほとんど何の情報も得られないということがわかった。このQ&Aおよび記者会見のレポートはこちら(LINK)。Q&Aの動画はこちら(LINK)、記者会見の動画はこちら(LINK)。監督インタビューはこちら(LINK)。