実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『イップ・マン 葉問(葉問2)』(葉偉信)[C2010-22]

東京国際映画祭19本めは、同じく六本木ヒルズで葉偉信(ウィルソン・イップ)監督の『イップ・マン 葉問』(TIFF紹介ページ/公式/公式(海外))。アジアの風・【生誕70年記念〜ブルース・リーから未来へ】の一本。

イップ・マン 序章(葉問)』[C2008-41]の続篇だが、あくまでも『イップ・マン 序章』がメインでこちらは添え物。邦題は配給会社の勝手な都合。実際はどうだか知らないが、『イップ・マン 序章』がヒットしたので「「早く続篇作れよ」と言われて急いで作りました」的な気配が漂っている。

本作は1949年以降の香港が舞台。葉問(甄子丹/ドニー・イェン)が香港で頭角を現していくところ、道場を大きくしていくところが描かれるのかと思ったら、ならず者イギリス人ボクサーとの戦いがメインで「なんだかなー」という印象。日本が去ったと思ったらまたイギリスが戻ってきたという背景はあるにせよ、イギリス人を相手に愛国的な対立の構図をもってくるのは、日中戦争時のような必然性に欠ける。イギリス人が威張っているさまがわかりやすく描かれているが、もう少し時代的背景があるといいのだけれど。

また、相手のイギリス人が中国武術をハナからバカにしているため、観客は一方的に香港人の側を応援する構図になり、ドラマに深みがない。イギリス人の技がボクシングであり、型の美しさを見せるものでないこともあり、ひたすら続く試合シーンにだんだん飽きてくる。

この映画に出てくる主な試合シーンは三つ。ひとつめが葉問と洪拳の宗師、洪震南(洪金寶/サモ・ハン)との闘い。ふたつめが洪震南とイギリス人ボクサー、龍捲風との闘い。みっつめが葉問と龍捲風との闘い。当然、最初の試合がいちばんおもしろい。アクションシーンでの洪金寶の出番は甄子丹と同じくらい多いため、洪金寶萌えの人には強力お薦め。

個人的にいちばんおもしろかったのは映画の序盤。葉問が建物の屋上に道場を開くけれど、ぜんぜん弟子入り志望者が来ないので、毎日ヒマそうに座っている。そうすると高橋とよが洗濯物を干しに来て、「今日もお弟子さん来ませんねえ」とかなんとか挨拶していく。これって『東京物語[C1953-01]へのオマージュ?

上映後、倉田保昭氏と映画評論家の知野二郎氏をゲストにトークショーが行われた。この映画とは関係なく、李小龍(ブルース・リー)をはじめとして倉田さんが香港映画で共演したスターのエピソードを語るもの。だれについて語っても話がいつのまにか下ネタになり、「で、こんな話でよかったんでしたっけ?」で終わるのがおもしろかった。