実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『明りを灯す人(Svet-Ake)』(Aktan Arym Kubat)[C2010-15]

今日はまず渋谷へ直行。NHKアジア・フィルム・フェスティバル(公式)の最後の一本、アクタン・アリム・クバト監督の『明りを灯す人』を観る。監督のアクタン・アリム・クバトは、『あの娘と自転車に乗って』[C1998-29]、『旅立ちの汽笛』[C2001-05]アクタン・アブディカリコフキルギス名に戻したらしい。

息子さんを主演に、ソ連時代のキルギスをいくぶんノスタルジックに撮った自伝的な映画から一転、今度は自身が主演して、混乱するキルギスの今を描いている。主人公は電気技師。メーターを細工して貧乏な人がタダで電気を使えるようにしたり、風力発電を夢見て実験装置を作ったりしている。

ソ連の崩壊と独立から20年近く、キルギスはいまだ政治的混乱の中にあるらしく、中央政府崩壊のニュースが伝えられる一方、何もなさそうな田舎にも開発の波がやってくる。開発はキルギスの資本だけで行われるわけではない。やってくるのは米帝でもロシアでもなく、もちろん中国人投資家である。おとなりなので当然といえば当然だが、かなりの田舎なだけに「おぉ、こんなとこにも中国人」と、妙な感慨がある。土地を開発し、政界に打って出ようとする男が中国人投資家を三人連れてきて淫行接待するのだが、この三人の描写もなかなか細かい。わりと年配のふつうのおっさんっぽい投資家は、古くさいフィルムのポケットカメラをもっているが、もっと若くてやり手っぽい男は、当然のようにデジタルカメラをもっている(もしかして本物の人たちを連れてきたら、たまたま自前のカメラがそうだったのかもしれないが)。

キルギスの今が描かれているといっても、のどかな風景の広がる小さな村が舞台であることはこれまでと変わらない。素朴な家や庭など、土色の風景があいかわらずよく、映像も美しい。今回は、風がものすごく強い土地が舞台なので、常にびゅーびゅー風が吹いているのが印象的だった。