実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『女医の愛欲日記』(深尾道典)[C1973-S]

Meal MUJIで昼ごはんを食べたあと、ラピュタ阿佐ヶ谷へ移動するため東京駅へ行ったら中央線が止まっていた。あまり時間がないのに代替手段もなさそうだし、パニック状態でウロウロしていて、ふと我に還る。これから観ようとしているのは、果たしてそんなにパニックになるほどの映画なのか、と。観る予定なのは、「孤高の名優佐藤慶」特集の『女医の愛欲日記』である。ちなみにJ先生は今日は仕事。「せっかく『女医の愛欲日記』観に行くのに」と言ったら知らないようなので、「佐藤慶が出てるトンデモポルノらしいよ」と言ったら、「ああ、石井さんの趣味ね」とひとことで片づけられた。

結局電車はすぐに動き出したので、無事に阿佐ヶ谷に行けて、『女医の愛欲日記』を観た。オープニングがいきなり全裸で馬に乗るヒロインというとんでもなさだったので、わざわざ来た甲斐があったと安堵した。といっても別に、ヒロインが巨乳だとかハダカが美しいとかエロいとかいうわけではない。残念ながら。

ヒロインを演じるのは白石奈緒美というオバさんで、見ていてかなりつらい。人の好みは様々だが、彼女目当てに観る人とか、ポルノとして使えるという人は少ないのではないかと思う。それにひきかえ男優陣はといえば、佐藤慶渡辺文雄戸浦六宏小松方正と、大島渚映画としか思えない豪華さ。といってもカラミがあるのは佐藤慶だけだが、まあふつう佐藤慶だけでいいよね。というわけで、どちらかといえば女の子向けのポルノです(ホントか?)。

観た印象では、この白石奈緒美という女優さんが、「いちばん美しいわたし(その基準は常人とはかなり異なる)をフィルムに残したい」と言って実現した企画という感じがした。でなければ、服を着たままえんえんと踊りまくるシーンや、腋毛の生えかけた、または剃り残した腋の下のアップ(せんきちさん、出番です)や、羊の鳴きまねをする顔のアップ(回を重ねるごとに顔はゆがみ、カメラは近づく)が撮られている理由がわからない。まあ実際は違うとは思うけれど、Wikipediaで彼女のプロフィールを見ると、ポルノ女優というわけではなさそうだし、日本美術史を研究したり、料理研究家になったりしてタダモノではなさそうなところが、いろいろと想像をかきたてる。

衝撃のラストを含め、いろいろとヘンな映画だし、佐藤慶のSMシーンも見られるし、一度は観るべき映画である(たぶん一度でいい)。