実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『神火101 殺しの用心棒(神火101)』(石井輝男)[C1966-49]

朝から出京し、ジャン・フランソワでかなり早めの昼ごはんのあと、シネマヴェーラ渋谷へ。「石井輝男 怒涛の30本勝負‼」(公式)にはじめて参戦し、帰宅目的その2の『神火101 殺しの用心棒』を観る。録画で観てはいるが、やっとスクリーンで観ることができた。

香港・澳門ロケ三部作(勝手にそう呼んでいるだけで、別にシリーズではない)のひとつだが、傑作『ならず者』[C1964-31]、快作『東京ギャング対香港ギャング』[C1964-21]と比べると、正直かなり見劣りがするといわざるを得ない。

いちばん問題なのは主役が竹脇無我であるということで、これがぜんぜん魅力なし。ヒロインは吉村実子で、これは地味すぎ。竹脇無我といえば、子供のころ(この映画よりかなりあと)に母が「日本でいちばん二枚目なのは竹脇無我」と言っていた(別に母がファンだったようすはなく、一般論としてという論調だった)。あまり見る機会がなかったので、見かけるたびに思い出してじっと眺めたが、あまり納得できなかった。映画を観るようになってもあまり見ないが、たまに観る作品はことごとく「主演が竹脇無我でなかったらなあ」というものだった。実際に「日本でいちばん二枚目」といわれていたのかどうか知らないが、わたしはぜったい違うと思う。二枚目は二枚目だろうけど色気がない。

ストーリーも、わかりにくいというか、無駄に複雑ですっきりしていない。これはおそらく原作もの(香港のコミックが原作らしい)だからで、なんだかダイジェスト版みたいな感じになってしまっている。

この映画の特筆すべき点は、日本人が香港へ行く話ではなく、香港人や香港在住の人たちのお話であるということ。そのため全篇香港・澳門ロケであること。香港との合作であり、香港映画界からの出演者もあること。特に、林翠(リン・ツイ)が出ていること(林翠を引き立てるために吉村実子なのか?)。

話されている言語は実際は広東語であるはずだが、残念ながらすべて日本語。このことについて最初に注意書きがあったような気がしていたが、実際は香港俳優の台詞を日本語に吹き替えてあることについての注意書きだった。香港公開時はおそらく北京語吹き替えだったと思われ、そのためか主人公の鄧雷は「たんれい」と北京語読みだった。そうすると高松英郎演じる麥警部補は「まい」のはずだが、竹脇無我は「めいさん」と呼んでいるように聞こえた。さらに不可解なのは、大木実演じる郭総領事(在澳門)が「かく」と名乗っていたこと。「某国」の総領事だから? 主要登場人物のうちのふたりは実は日本人でしたというのは、原作にはないと思うがかなり興ざめで、徹底して日本とは関係ないお話にしたほうがよかった。日本のA級戦犯が香港に潜伏していたら、香港人はぜったいに許さないと思います。

香港・澳門ロケは、前二作でのロケハンの成果を使って効率よく撮りました(会社違うのに)、という感じで、似たような場所ばかり出てくる。目新しいのは灣仔と淺水灣くらい。上環の次のショットが香港仔というのは、何度観ても唖然とする。今回はあまり路地などは出てこず、濃厚な香港・澳門の匂いが感じられなくて物足りない。

他のキャストは、まず吉田輝雄だが、タイトルにもなっている敏腕諜報員、神火101を演じているにもかかわらず、主役でもないし、たいして活躍もしない。わたしを映画館に連れてくる以外、たいして存在意義がなかったが、出てくるたびにやたらとかっこつけているのがよい。大木実は、悪役にもかかわらずあまりぱっとせず。潜水シーンの短パン姿がかっこ悪かった。あと、菅原文太をチェックするのを忘れないようにする必要がある(チョイ役なので)。