実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『第三の男(The Third Man)』(Carol Reed)[C1949-17]

昨夜、実家から自宅に戻ったばかりだが、朝から出かける。行き先は、TOHOシネマズららぽーと横浜というはじめて行く映画館。全国のTOHOシネマズでかなり前からやっている「午前十時の映画祭」(公式)にはじめて参加。「何度観てもすごい50本」というキャッチコピーで、この時点で劇場で観ているのはちょうど半分の25本だが、何度観てもすごい映画なんて『ワイルドバンチ[C1969-19]しか入っていない。

今日観たのは、キャロル・リード監督の『第三の男』。

これは、黄金周のオーストリア旅行の前にDVDで観ていて、基本的な感想はそのとき(id:xiaogang:20100117#2)と変わらない。

実際にウィーンを見てきたことと、大きなスクリーンで観たことで、(安DVDとは違って)細部がけっこうよくわかった。それだけになおさら、もっとじっくりと廃墟のウィーンを写してほしかったと思う。今回の旅行では、残念ながらこの映画のロケ地にはあまり行けなかったが、けっこうつぎはぎで撮られている。モノクロ画像はスクリーンで観るとなおのこと美しいが、実際の地形を生かしていないことが、忙しないショットや、ナマナマしい時代の空気を欠いていることにつながっていると思う。

オーソン・ウェルズの登場のしかたは、やはり毎度毎度丹波哲郎を連想させたが、考えてみたら『東京ギャング対香港ギャング』[C1964-21]でのタンバの登場シーンは、実際に『第三の男』を意識したものだったのではないだろうか。『第三の男』の終盤の下水道のシーンは、『殺人容疑者[C1952-19]を連想させるが、こちらもタンバ。『殺人容疑者』は、焼け跡の雰囲気の残る東京での魅力的なロケを見ても、おそらく『第三の男』を意識した企画であったにちがいない。

出演者では、アリダ・ヴァリが美しかった(時々ニューハーフっぽく見えなくもないが)。主人公のジョセフ・コットンに魅力がないのが残念。

日本語字幕がちゃんとしていて、うちのDVDでは見たこともない台詞も多数あり、情報量が増えて満足した。やはりあやしげな廉価版など買うものではないということがよくわかった。