遅めに出京し、神保町シアター(公式)でチケットを買って(整理番号36)、+cafe Flug(公式)で昼ごはんを食べて、ふたたび神保町シアターへ。「ニッポンミュージカル時代」特集で、井上梅次監督の『踊りたい夜』を観る。土曜日の上映は満席だったと聞いていたが、今日も満席。いつもの客層(つまり老人)なので、『香港ノクターン』[C1966-37]を観た香港映画ファンが詰めかけているというわけでもなさそう。
『踊りたい夜』は、スカパーで放映されたのを観ているけれど(id:xiaogang:20050402#p1)、スクリーンではこれがはじめて。初見のときはけっこうがっかりしたような記憶があるが、今回は特に期待していなかったためか、あるいは大きなスクリーンで観たためか、なかなか楽しく観ることができた。『嵐を呼ぶ楽団』[C1960-55]と同じような話で、ミュージカル仕立ての部分もあるし、似たようなネタも使っているが、どちらかといえば『踊りたい夜』のほうが好き。
主役の三姉妹を演じるのは、上から水谷良重、倍賞千恵子、鰐淵晴子。こう並べただけで地味だが、とにかく倍賞千恵子がビンボーくさい。倍賞千恵子がビンボーくさい、倍賞千恵子がビンボーくさい、倍賞千恵子がビンボーくさい…と100回言いたくなるような映画である。そう感じるのは、すでに鄭佩佩(チェン・ペイペイ)ヴァージョンを観てしまっているからだけとは言えまい。
そもそも倍賞千恵子って、なんで人気があったのかわからない。あまり色っぽくなくて、あまり知的じゃなくて、あまりゴージャスじゃなくて、あまり高貴な感じじゃなくて、そのへんにいるような庶民的で親しみやすい、ちょっとかわいい女の子ということなんだろうとは思う。吉永小百合もこのタイプだが、彼女の人気の理由もよくわからない。彼女も庶民的で、たまにやっているお嬢様役には無理があるが、それでもビンボーくさいというほどではない。倍賞千恵子は全身にビンボーくささが漂っているし、アップになるとかわいいというよりちんちくりん。歌って踊れるから起用されたのだろうが、色気もなさすぎるし、華やかなショウダンサーの役には不向き。
あとのふたりはまあまあ。水谷良重は、美人というわけではないし、あまり好きな顔ではないが、色っぽいし、やはり存在感があるし、華があって舞台映えする。鰐淵晴子はかわいくて派手な顔立ちだし、バレエを踊る見せ場がたっぷり。
相手役となるのは、それぞれ佐田啓二、吉田輝雄、根上淳。女性陣より豪華だが、ここはもちろん吉田輝雄の圧勝。ただし、特別吉田輝雄らしさを見せるシーンはない。また、彼の歌は明らかに吹き替えだが、その声が彼の声にぜんぜん合っていない。
それから、ダンサー仲間を演じている藤木孝がキモチわるい。ふつうに芝居しているときの顔が、舞台の上で歌って踊っているときと同じなのだ。すなわち不自然なほどの笑顔とキラキラ光る目。『乾いた花』[C1964-34]での虚無的な雰囲気とは別人みたいだが、不気味という点では同じか。