実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『嵐を呼ぶ楽団』(井上梅次)[C1960-55]

午後から出京。神保町シアター(公式)でチケットを買って(整理番号11)、三省堂で買い物をして、スヰートポーヅで晩ごはんを食べて、ドトールで珈琲を飲んで、ふたたび神保町シアターへ。現在の特集は「ニッポンミュージカル時代」で、今日は井上梅次監督の『嵐を呼ぶ楽団』を観る。神保町シアターっていつも混んでいるのかと思っていたが、これはけっこうすいていた。

東宝系(これは宝塚映画)には音楽映画が多いが、実際に歌や踊りができる人を多く使っているので、どうしても画的に地味である(というか好みではない)。「美空ひばり主演」とか「雪村いづみ主演」とか書いてあると、それだけでたいてい観ないのだが、これは宝田明が主演なので観ることにした。

井上梅次の音楽映画といえば『香港ノクターン[C1966-37]だが、大まかなストーリーはこれもだいたい同じ。グループを結成してショービジネスの世界で成功するが、メンバーがバラバラになって低迷したり苦難にみまわれたりし、最後にそれを乗り越えてみんなでふたたびステージに立つ、というものだ。この『嵐を呼ぶ楽団』の場合は、演奏シーン以外に、歌によってストーリーが展開するミュージカル部分があって楽しい。使われている曲はいまひとつ好みではなかったが、曲の内容がうまくストーリーに絡められている。前半、メンバーを集めるところなどはかなり寒い感じだが、だんだんノってきてうまく盛り上げている。笑えて泣ける娯楽映画の王道という感じで、素直に楽しむことができた。

とはいえ、男中心のジャズバンドというだけでも華やかさに欠けるのに、見た目で見せられるのは宝田明だけ。あとは、高島忠夫、神戸一郎、水原弘、柳沢真一、江原達怡と、かなりしょぼい。水原弘の顔を知らなかったので、超キモチわるい眉毛の若旦那かなと思ったら、出来の悪い石原裕次郎のコピーみたいな流しのギター弾きのほうだった。女性陣も、朝丘雪路はまあまあだけど、雪村いづみは顔も声もきらい。

ほかに注目すべきキャストは、東宝系では珍しい安部徹。てっきり悪徳興行主か何かだと思ったら、いい人なうえに大阪弁でヘンな感じ。ちなみに、悪徳のほうは山茶花究が引き受けている。

しかしこの映画のタイトルはあんまりだ。同じ日活ならまだしも、他の会社の映画にこんなタイトルをつけなくても。こういう手抜きタイトルが、内容の正当な評価を妨げる。