実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『友だちの恋人(Comédies et Proverbs: L'Ami de Mon Amie)』(Eric Rohmer)[C1987-41]

続いて『友だちの恋人』。ほとんど内容を憶えていなかったので再見。

親友どうしのブランシュ(エマニュエル・ショーレ)とレア(ソフィー・ルノワール)、ブランシュの片思いの相手、アレクサンドル(フランソワ・エリック・ゲンドロン)、諍いの絶えないレアのボーイフレンド、ファビアン(エリック・ヴィラール)。この四人が主要な登場人物で、相手を入れ替えることで二組の似合いのカップルができました、というお話。おもしろいことはおもしろいのだけれど、ロメールとしてはちょいといまひとつだと思う。その理由は次の三つ。

第一に、ブランシュというのが激しくいけすかない女である。まず、ちまちましたつくりの顔が嫌いだ(J先生はかわいいって書いてた。シュミわる〜)。ぶりっ子っぽい仕草にも嫌悪感が走る。まじめでぶりっ子な性格がまたイヤだ。ファビアンとやることだけはやっておいて、「あなたは友だちの恋人だから、こういうのはよくないわ。これからもおともだちでいましょう」…。対デルフィーヌ(『緑の光線』)の100倍の真剣さで、「死ね、おまえ」とつぶやかずにはいられない。

第二に、主要な四人の人物にあまり個性がない。割り当てられている役柄のイメージそのままという感じで、話す内容もあまりユニークじゃない。ソフィー・ルノワールはかわいいのだけど。食堂で知り合ったブランシュとレアが意気投合するというのも、かなりあり得ない感じがする(水と油だと思う)。

第三に、新興都市のセルジー=ポントワーズが舞台であること。ロメール映画の魅力はまず第一に人であるが、人物をとりまく環境や日常生活のディテールも大きな魅力だ。たとえば、古くて雑然としているけれども居心地のよさそうなアパルトマンや、パリのごちゃごちゃした街並み、リゾートというより海水浴場といった感じの海辺。ピカピカしたいかにも美しいものではなく、生活感があふれた気のおけない雰囲気のなかに、ときどき目につくセンスのいいものやかわいいもの。そういった魅力がこの映画には全くない。街も、オフィスも、アパルトマンも、人工湖も、整然としていてきれいだが、手垢がついていなくて味気ない。

さらに付け加えるならば、おフランスといえども80年代は80年代だということである。つまり、ファッションがひどい。特にお役所勤めのブランシュのダボっとしたジャケットとか、観ていて「あ〜」とため息をつきたくなる。

映画が終わると、なぜかすごくとんかつが食べたかった。経済的、健康的、体型的な理由から、「とんきは月一回以内」と年頭に誓ったが、2月に行かなかったのを言い訳に、2週連続でひれかつを食べる。