バンガロールに来ちゃったの

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『アデュー・フィリピーヌ(Adieu Philippine)』(Jacques Rozier)[C1962-44]

遅めに出京して渋谷へ。ユーロスペースへ行って今日から始まる「ジャック・ロジエのヴァカンス」(公式)の整理券をもらう。こういう特集は夏にやっていただきたいものだが、まあしかたがない。ジャック・ロジエについては、ずっと前に友人から「『アデュー・フィリピーヌ』はいい」と薦められたことがあるけれど、今まで観る機会をもたなかった(上映されたことはあるようだ)。セガフレードで昼ごはんを食べてから、まずはその『アデュー・フィリピーヌ』を観る。

アデュー・フィリピーヌ [DVD]

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日本では一般公開されていない伝説のヌーヴェル・ヴァーグということで、まずはシネフィルが来ることが予想されたが、チラシなどのおしゃれな雰囲気から、ひとむかし前でいうところの渋谷系女子みたいなのが大挙して押し寄せるのではと思っていた。ところが、混んでいるという予想は当たったけれど、渋谷系女子なんて皆無。「韓流シネマ?フィルムセンター?」と思わずつぶやいてしまう高齢な客層であった。なんであれ、ミニシアターの客席が埋まるのはうれしいことなのだが。

映画は、二人組の女の子、リリアーヌ(イヴリーヌ・セリ)とジュリエット(ステファニア・サバティーニ)と、彼女たちをナンパして両方とうまくやろうとするミシェル(ジャン=クロード・エミニ)のひと夏のお話。パリでは共闘していたふたりも、舞台がコルシカ島に移ると、相手を出し抜いて勝ち誇ったり、またその気配を敏感に感じ取って不機嫌になったりする。そんなオンナノコ的な雰囲気が日常的な目線で描かれていて楽しい。

雲行きの怪しいコルシカでのヴァカンスは、ミシェルへの兵役の招集が予定よりも早くやってきて、突然終わりを告げる。わたしたちには馴染みのない「兵役」だが、台湾映画にはよく出てくるので個人的にはけっこう馴染みがある。兵役までのモラトリアムという意味では侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の『風櫃の少年』[C1983-33]を連想させるが、たとえば『夢遊ハワイ』[C2004-10]に描かれているように、いまの台湾では兵役はそんなに深刻なものではない。ところがこの映画の場合、兵役とはすなわちアルジェリアでの戦争である。そのことは冒頭のクレジットでわずかに示されるのみだが、除隊した幼なじみに対するミシェルとその家族の歓迎ぶりや、その幼なじみが兵役について何も語らないところや、出発する前のミシェルの台詞にその深刻さが暗示されていて、たわいもない恋愛ごっこに暗い影を落としている。

とにかく、モノクロなのが信じられないくらい、夏やヴァカンスや青春のキラキラがフィルムにあふれている。特に、リリアーヌとジュリエットがとびきりフレッシュでキュート(わたしはリリアーヌのほうが好みだ)。朝起きたふたりが同時に「ボンジュール、フィリピーヌ」と叫ぶところと、最後にミシェルを乗せた船を追うように走り出すところが好き。

あと、いっこうにOKが出ない、リリアーヌとジュリエットが出演する掃除道具のコマーシャル・フィルムのラッシュがえんえんと流れるところや(ふたりのやる気のなさとダメっぷりがすごい)、ミシェルの家族のしゃべりまくりの食事シーンも楽しかった。「アメリカやソ連よりも怖いのは中国だ」と語るおじいちゃんは鋭い。