実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『モラン神父(Léon Morin, prêtre)』(Jean-Pierre Melville)[C1961-39]

東京フィルメックスは、今日からメイン会場の有楽町朝日ホールでの上映がはじまる。わたしも今日から参加で、今日はおフランスデー。

1本めは、ジャン=ピエール・メルヴィル特集の『モラン神父』。第二次世界大戦下のフランスの田舎町を舞台に、無神論者の女性バルニーと、若い神父モランの交流を描いたもの。アンリ・ドカによるモノクロの映像が非常に美しい。繰り返し登場する小さな町の石畳のメイン・ストリートや、司祭館の階段もいい感じである。第二次世界大戦下の、イタリアに占領されたり(イタリア軍の帽子にびっくり)、ドイツに占領されたりして町の状況が刻々と変わっていく感じも興味深い。

しかしわたしは、宗教、特にキリスト教が絡むとどうもダメだ。まず、どうしてバルニーがモラン神父の話に心を動かされ、あげくの果てにカトリックに改宗するのか、というところが理解できない。そのため、モランが神父だからということをふたりの恋の当然の障壁として受け止めることができず、禁断の雰囲気に酔うことができなかった。

バルニーを演じるのは、けっこう好きな女優であるエマニュエル・リヴァ。飾り気のないコミュニストの女性という想定で、着ぶくれてのしのし歩いていたりもするのだけれど、どんどん美しくなっていく感じがすばらしい。彼女のようなベレー帽のかぶりかたを試してみるが、顔が地味だとやはり似合わない。

モラン神父を演じるのは、ジャン=ポール・ベルモンド。おそらく当時としても意外なキャスティングだっただろう。ベルモンドなだけにまじめな神父だとはどうしても思えないのは、狙ったキャスティングなのだろうか。最初は悪徳神父じゃなかろうかと疑ったり、司祭館やバルニーの家でのふたりきりの空間がやけにアヤしく感じられたり、そのうちよろめくのではないかと期待させたりする。そのギャップを堪能すべきなのだろうが、期待しすぎてがっかりしてしまうのも事実である。

ちなみに、モラン神父の名前はレオン・モランだが、最初にバルニーが名前で神父を選ぶシーンで、「レオンという名前は農民出身だろう」と言っていた。つまり、田舎くさいダサい名前ということだと思うのだが、黎明(レオン・ライ)さんはどう思われますか?