実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『永遠の天(天長地久)』(李芳芳)[C2009-11]

今週はずっと有給休暇で、土曜日まで毎日映画祭。今日の一本めは六本木ヒルズなので、セガフレードのモーニングセットを昼ごはんに食べてから、コンペティション部門の『永遠の天』を観る。監督は李芳芳(リー・ファンファン)。

原題は“天長地久”。“天長地久”といえば劉徳華(アンディ・ラウ)(『アンディ・ラウのスター伝説』[C1993-22])なのだが、それはさておき、‘天長地久’というのは「永遠」という意味だろう。天と地はセットなのに、『永遠の天』とつけてしまう邦題のセンスが理解できない。

一組の男女の20年近い年月を描いた、ある意味これも『テン・ウィンターズ(Dieci Inverni)』[C2009-10]的な映画だが、ヒロインの従弟を含めた男女三人の、親を失った子供たちの成長物語でもある。国営企業の倒産や北京オリンピック招致、張國榮(レスリー・チャン)の死、SARSの流行など、1992年から2008年くらいまでの社会的な事件も盛り込まれている。しかし、あまりにもいろいろなものを詰めこみすぎであり、主要登場人物の人生はあまりにも波乱万丈である。映画は、どのシーンでも事件が起こっていないといけないわけではない。

主な舞台は杭州。路地などの風景はいい感じだが、あまりにもくすみがなくてクリアすぎる。よく見れば建っている家は古いし洗濯物も干されているが、水をかけて汚れやゴミを流してから撮りました、という感じで風情がない。それから時々挿入される西湖の風景。わたしは杭州を知らないので、西湖がどの程度市民生活に密着しているものなのかわからない。もしかして杭州市民は、朝な夕なに西湖のほとりにたたずんで、もの思いにふけっているのかもしれない。しかしわたしには、外国向けサービス絵はがきショットにしか思われなかった。さらに、登場する大学や病院や会社やレストランがみなピカピカにきれいである。個々の施設はおそらく実在のものなのだろうが、そんなところばかりで過ごしている人もいないだろう。

とにかく波乱万丈な物語なのだが、それがいちいちベタなドラマで展開される。断片的な描写やさりげない台詞で端的に表されるということはなく、登場人物が一気に台詞で語ってしまうという工夫のないシーンが多い。なかでも最悪なのが母親たちの芝居である。杭州が舞台なのに、模範的普通話で泣かせる芝居を見せられてうんざりし、感動するどころか引いてしまう。

ヒロインを演じる劉冬(リウ・ドン)は、張曼玉(マギー・チャン)と原田知世を足して三割がたブサイクにしたような感じ。悪くなかったが、走るシーンがたくさんあり、その走り方がかっこ悪いのが気になった。女の子が走るショットは映画のキメのショットのひとつであり、かっこよくなくちゃいけない。相手役の黃明(フアン・ミン)はなかなかイケメンだった。

あと、(別にいい意味ではなく)印象的なのは俯瞰。この監督(あるいはキャメラマン)はよほど俯瞰が好きらしい。吹き抜けのある主人公の家での俯瞰ショットは頷けるが、それ以外にも至るところで俯瞰。あまりに多いので笑ってしまった。

上映後はQ&Aがあったが、次のプログラムまでの時間があまりなかったのでパス。出ようとしたら入口通路にゲストのみなさんが待機していて、ナマ黃明を間近で見られたのがラッキーだった。インタビューなどの記事を見るかぎり、監督はかなりいけすかない人物のようである。