実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『金子光晴と森三千代』(牧羊子)[B1345]

金子光晴と森三千代』読了。

金子光晴と森三千代 (中公文庫)

金子光晴と森三千代 (中公文庫)

森三千代には、金子光晴を通して興味をもっている。しかしながら、現在のところ彼女の著作を読むことは難しい。というわけでこの本を読んでみた。ところが、これまためちゃくちゃ修飾語が多く、しかも一文がものすごく長いのでたいへん疲れた。

論理的な構成でも論理的な論述スタイルでもなく、そもそも何について書こうとした本なのかよくわからない。連載時のタイトルは『心情的森三千代論』だったらしいが、森三千代論とも思えない。結局のところ、著者が感嘆したり、舌を巻いたり、度肝を抜かれたり、刮目したりしているだけの本に見える。

森三千代の仏文詩集“Poesies Indochinoises(詩集インドシナ)”の抄訳が載っているのと、『和泉式部日記』の現代語訳が少し引用されているくらいが収穫か。『和泉式部日記』は、原文および円地文子版と比較してあっておもしろかった。森三千代のは古典っぽさがぜんぜんなくておもしろそうだ。

すでに読んでいる金子光晴の著作物はたくさん引用されているのに、読んでいない森三千代の小説などの引用はあまりなかったのも残念。『青春の放浪』、『新宿に雨降る』、『去年の雪』の三部作が読みたいので、どこか文庫で出してくれないだろうか。