実録 亞細亞とキネマと旅鴉

サイトやFlickrの更新情報、映画や本の感想(ネタばれあり)、日記(Twitter/Instagramまとめ)などを書いています。

『雨が舞う 〜金瓜石残照〜』(林雅行)[C2009-01]

先週末は法事だったので久しぶりの休日。朝から出京し、渋谷・ユーロスペースへ。モーニングショーで『雨が舞う 〜金瓜石残照〜』を観る。台湾・金瓜石を描いたドキュメンタリーで、上映前に監督のトークショー(というより挨拶)あり。

前作の『風を聴く 〜台湾・九份物語〜』[C2007-12]と同様、内容的には興味深いが、ドキュメンタリー映画としてはダメ。構成とかもっと工夫がほしい。感想を書こうとすると、『風を聴く 〜台湾・九份物語〜』(id:xiaogang:20071110#p1)と同じような内容になってしまう。

日本鉱業のもとで金瓜石の金鉱が最も栄えていた時代。そのころを知る日本人と台湾人の老人たちのインタビューが中心。『無言の丘』[C1992-79]でも描かれていた、日本人と台湾人との歴然とした差別、また日本人社会、台湾人社会の中でも階層がはっきりしている当時の階級社会が語られているのが興味深い。台湾人の老人たちが、差別を語りながらも、子供時代や賑わっていた当時の様子に懐かしさをみせるなか、日本鉱業の庶務課で働いていたという台湾人女性(毅然とした雰囲気が「おばあさん」と呼ぶのをためらわせる)が、全く笑顔を見せずに差別待遇の詳細を語っていたのが印象的だった。時間外手当の割増率や病欠できる期間など、異様に詳細に記憶しているところもすごい。

ほかに内容的な収穫は、“金瓜石 ◆浪漫、多情又温馨的山城◆”[B275]でふれられていた捕虜収容所について描かれていたこと。シンガポールから連れてきていたことははじめて知った。日本占領下のシンガポールでは、日本軍より捕虜のほうが人数がずっと多くて大変だったらしいが、こんなところに連れてきていたんですね。それから、瑞芳事件のことははじめて知った。

金瓜石は何度も訪れていて好きなところだが、映画の風景を観てもあまり心を動かされなかった。どうしても実物のほうがいいと思ってしまう。ビデオ撮りで、画質が悪い印象を受けたが、チラシにはハイビジョンと書いてあった。ほんとですか?

最後に金瓜石に行ったのは2004年で、黄金博物園區はほとんどできていたけれどまだオープンしていなかった。その後どれほど変わっているのかドキドキしたが、そんなには変わっていないようだ。広い金瓜石の大部分はほとんど変わっておらず、そのなかで見たら、1990年代と比べて大きく変わった黄金博物園區あたりは点みたいなものにすぎない。

ところで、ナレーションで2回も「けいびんてつどう」と言っていたが、「けいべんてつどう」だと思います。また、インタビューを受けている日本人の家に小さいパンダのぬいぐるみが飾られていたことを記録しておく。

映画のあとは、上の階のシネマヴェーラへ寄って、次のプログラムのチラシをもらう。なぜかユーロスペースには置いてないけれど、仲が悪いんだろうか。風邪がずっと治らなくて体調がすぐれないので、ドゥ・マゴで昼ごはんを食べ、ちょっと買い物して帰宅。