「山下耕作ノ世界」最終日、まず1本めは『博奕打ち 総長賭博』。DVDの前にVHSでももっていてけっこう観ているので、劇場でも何度も観ているつもりでいたら、なんと一回しか観たことがなかった。
- 出版社/メーカー: 東映ビデオ
- 発売日: 2006/11/18
- メディア: DVD
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それに否応なく巻き込まれる妻や子分たち。桜町弘子、藤純子、三上真一郎。格別、鶴田浩二の妻役の桜町弘子がいい。三上真一郎は、『秋刀魚の味』[C1962-02]から6年も経っているのに、全然年を取ったように思われず、どこか幼さを残す若山富三郎の子分を好演。序盤、彼には幸福な結婚をさせてやりたいと鶴田浩二と桜町弘子が話すところで、早くも彼のその後の運命が暗示される。最後の最後に、破滅に向かって突き進むことの空しさを悟り、戦いの連鎖を断ち切ろうとするが、結局殺されて救いがない。
ヤクザ映画でいちばん好きなのは、男と男が語り合うシーン。この映画にはそのようなシーンがふんだんにある。その中心はもちろん、鶴田浩二と若山富三郎。やっぱりこのふたりは梁朝偉(トニー・レオン)と杜汶澤(チャップマン・トー)だと思う。杜汶澤じゃ、ちょっと迫力がないけどね。でもぜひリメイクしてほしいものである。
大きなスクリーンできちんと観たら、そのほかいろいろな気づきなどがあった。
- 若山富三郎が「俺もホモだ」と言うこと。いや、耳ではちゃんと「俺も本望だ」と聞こえるのだが、アタマでは「俺もホモだ」と聞こえるのだからしかたがない。
- 兄弟会の会合のシーンが3回くらいあり、毎回お茶とお菓子が出ていて、毎回違うお菓子で、それがけっこう長く映ること。お菓子に手をつけている人とつけていない人がいたり、けっこう芸が細かい。
- 三上真一郎と曽根晴美の仲良しぶりがかなり強調されていて、それが修善寺で三上真一郎が曽根晴美を刺すところにつながっていること。そのシーンで、三上真一郎の袂から、ヨーヨーがぽろりと落ちること。
- 同じく修善寺で若山富三郎が名和宏を襲うシーン。あまり詳細を憶えていなかったが、名和宏が車に乗ろうとすると、中に隠れていた若山富三郎がぬっと起き上がるところが超渋かった。
- いつもは悪者に踊らされる役が多い名和宏が、一見同じような役に見えて、実は違うかっこいい役。思っていたより重要な役どころだった。
- すっかり忘れていたが、終盤の舞台は修善寺と湯ヶ島。修善寺へ行ったばかりなので、なおさら感慨深かった。また行きたい。
この映画は、これまでも傑作だと思っていたが、若山富三郎にあまり興味がなかったので、それほど思い入れはなかった。しかし最近、若山富三郎がちょっとしたマイブームなので、今回はなるべく若山富三郎の視点に立って観るようにしたら、物語の構造がくっきりと浮かび上がってすごくよかった。先日選んだ「邦画オールタイムベストテン」(id:xiaogang:20081205#p1)に入れなかったのが激しく悔やまれる。