実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『新訂版 夏目漱石の修善寺』(中山高明)[B1326]

『新訂版 夏目漱石修善寺』読了。

夏目漱石の修善寺―修善寺は漱石再生の地

夏目漱石の修善寺―修善寺は漱石再生の地

↑これしか出てこないが、これの新訂版

修善寺の甘味屋に置かれているのを見て、J先生のiPhoneでその場で買った本。著者は修善寺在住の元高校教師のようだが、自分の家に漱石の文学碑まで建てて、それを散歩コースのひとつとして紹介しているのにはドン引きした。だったら建てた経緯などを書けばいいのに、他人事のように紹介しているところがなんかイヤだ。

夏目漱石の「修善寺の大患」の詳しい経緯や、そのときに書いた漢詩や俳句の紹介から、修善寺を描いた作品、漱石ゆかりの地の紹介まで、漱石修善寺のかかわりを多角的に描いたもの。内容的には非常に興味深い。

しかしながら、その書き方にはいろいろ言いたいことがある。修善寺の大患の経緯と漢詩や俳句の紹介が別の章に書かれているが、これは内容がダブるのでひとつにまとめるべきだろう。それでなくても、おんなじことがもうほんとに何度も何度も書いてある。じいさん(推定)の書いた本にはありがちなことだが、ほんとうにうんざりする。

これまたじいさんの本にありがちなことだが、漱石はこう思ったとか、それを知って自分はこう思ったとかそんなことばっかりたくさん書いてある。「あんたの感想は聞いてないから」と何度もつぶやきそうになる。そうではなくて、漱石本人が書いたものや、その場に居合わせた人の書いたものの引用など、もっと一次資料に近いものを中心にまとめてほしかった。「むすびに」には、今はなき菊屋旧本館の写真がたくさんあるとか、亡くなった前の主人に漱石滞在の話を聞いたとか書いてあるが、だったらそういったものをもっと載せればいいのに。

最後にゆかりの地の散歩コースが提案されているが、各場所ごとにトイレの有無が書いてあるのはたいへんよろしい。でもコースまで指定するならもっと凝ってもよかったと思う。漱石と同じく大仁で降りろとか、菊屋の梅の間に泊まれとか。