実録 亞細亞とキネマと旅鴉

サイトやFlickrの更新情報、映画や本の感想(ネタばれあり)、日記(Twitter/Instagramまとめ)などを書いています。

『続花と龍 洞海湾の決斗』(山下耕作)[C1966-43]

豪華昼食のあとも、引き続きラピュタ阿佐ヶ谷。現在の特集は「山下耕作ノ世界」。うれしい特集だが、大好きな『博奕打ち いのち札』[C1971-19]も、再見したいのに東映チャンネルでもやってくれない『日本暴力列島 京阪神殺しの軍団』[C1975-11]もやらないのが不満だ。

今日観るのは『続花と龍 洞海湾の決斗』。その前の『花と龍』も観ていないのに今回の特集にはなく、「なぜ「続」だけ?」と思うが、まあしかたがない。最初にこれまでのあらすじが流れるが、かなり原作に忠実な印象。本編も、無理やり仁侠映画的な筋立てにまとめていたマキノ雅弘の『日本俠客伝 花と龍』[C1969-27]とは違い、かなり原作に忠実。金五郎とマンが若松に移り、石炭荷役を請け負う一家を構えるところから小頭の組合を作るところまで、話としてはまとまっている。しかし原作(『花と龍 (上)(下)』[B1279-上][B1279-下])を読んでしまったのも災いしてか、ダイジェスト版っぽい印象をぬぐえない。やっぱりマキノ版がいい。

主人公の玉井金五郎を演じるのは中村錦之助。なかなかがんばっているし、錦ちゃんの金五郎も悪くないのだが、どっち取るかって言やぁ、やっぱり健さんのほうだな。錦ちゃんは、女々しいクサい台詞をウジウジ呟いてるか、あるいはキメ台詞を叫んでいるか、いずれにしても一匹狼で、集団のリーダー的存在はいまひとつ似合わない気がする。

この映画の問題は、中村錦之助以外、ロクな俳優が出ていないということだ。敵役が佐藤慶なのはまあいいけれど、子分は知らないような人ばっかりだし、マンは佐久間良子だし、いちばんひどいのはお京。淡路恵子。「淡路恵子かよー」と叫びそうになったが、案の定、出番は少ない。吉田磯吉が月形龍之介なのはちょっと期待したが、これがまたぱっとしない。出てきただけで画面が引き締まるみたいな存在感を期待したのにぜんぜんそんなことはなく、説明的な台詞を早口でしゃべるのでがっかり。原作では、金五郎と吉田磯吉親分との関係や、お互いが抱いている感情はかなり複雑だが、映画での吉田磯吉はかなりいい人。『日本俠客伝 花と龍』もそうだった。原作が出た時点で、たしか子孫はカタギとのことだったと思うが、悪く描きにくい事情でもあるのだろうか。